2018年度診療報酬改定に向け、臨床現場でのICTやAIの活用をどう考えるか―中医協総会(1)



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 AI(人工知能:artificial intelligence)を用いた診療支援を進めるために、診療報酬によるエビデンス付与などを2018年度診療報酬改定に向けて検討すべきか―。

 8日に開かれた中央社会保険医療協議会の総会では、外来医療について検討する中で、こうした臨床現場でのICT利活用について診療側委員と支払側委員との間で激論が交わされました。

2月8日に開催された、「第345回 中央社会保険医療協議会 総会」
2月8日に開催された、「第345回 中央社会保険医療協議会 総会」

「調剤分野の改定財源」の在り方など、早くも種類別シェアに関する意見が出される

 メディ・ウォッチでもお伝えしていますが、2018年度には診療報酬と介護報酬の同時改定が行われることもあり、中医協では通常よりも前倒しで改定論議が行われています。すでに在宅医療と入院医療の総論について検討を行っており(関連記事はこちらこちら)、8日には外来医療をテーマとした総括的な議論が行われました。

 厚生労働省保険局医療課の迫井正深課長は、外来医療には次のような課題があることをあげています。

▼15歳未満の人口は減少しているが、15歳未満の推計外来患者数は横ばいで推移し、15歳未満における初・再診料の時間外・休日・深夜加算の算定回数も横ばいで推移している

▼外来受療率は、全体では近年横ばいだが、年齢階級別に見ると「65歳以上では減少」「0-9歳では増加」となっている

外来受療率は、高齢者で高いものの、徐々に下がってきていることも分かる
外来受療率は、高齢者で高いものの、徐々に下がってきていることも分かる
 

▼傷病別の推計外来患者数は生活習慣病(高血圧、糖尿病、高脂血症など)で多く、10年前と比べてやや増加している

外来患者の傷病を見ると、生活習慣病での受診が圧倒的に多いことが分かる
外来患者の傷病を見ると、生活習慣病での受診が圧倒的に多いことが分かる
 

▼65-84歳では、高齢になるほど外来受診率の増加や、複数医療機関受診患者割合の上昇が見られ、1人当たり外来医療費が増加傾向にある

外来受療率は、高齢者で高いものの、徐々に下がってきていることも分かる
外来受療率は、高齢者で高いものの、徐々に下がってきていることも分かる

 

▼高齢になるほど、1件当たりの薬剤種類数・薬剤点数が多い(高い)患者の割合が高まる

▼入院医療費・入院外医療費の増加は概ね「高齢化」で説明できるが、調剤医療費は「高齢化」以外の要素(医薬分業や薬剤費増)による増加の割合が大きい

ここ10年間における入院医療費・入院外医療費の伸びについては「高齢化」で説明できるが、調剤医療費では「それ以外の要素」が大きい
ここ10年間における入院医療費・入院外医療費の伸びについては「高齢化」で説明できるが、調剤医療費では「それ以外の要素」が大きい
 

▼病院のほうが、診療所に比べて入院外単価(1日当たり入院外診療報酬点数)の伸びが大きく、とくに検査・画像診断・注射の伸びが大きい

病院の外来単価は10年前に比べて大きく伸びており、とくに検査・画像診断・注射などの伸びが大きい
病院の外来単価は10年前に比べて大きく伸びており、とくに検査・画像診断・注射などの伸びが大きい
診療所の外来1日単価の伸びは病院に比べて小さい
診療所の外来1日単価の伸びは病院に比べて小さい
 

▼診療所の受診1回当たり診療報酬は、診療科ごとのバラつきが大きい(多様性がある)

 

 このうち調剤医療費の伸びに関連して診療側の猪口雄二委員(全日本病院協会副会長)は、「院内調剤のほうが院外処方に比べて低コストである」とし、院内調剤の在り方を改めて議論すべきと提案。また、同じく診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は、「『超高額医薬品』問題の陰に隠れてしまっているが、調剤技術料の関連医療費も増加を続けている。2018年度改定に向け『調剤報酬の改定財源』についてあるべき姿を議論していくべき」と訴えました。2018年度は厳しい改定になると予想される中、早くも「診療側内部でのパイの奪い合い」が始まりそうです。

 一方、診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)は、「有床診療所の減少が続いており、地域医療の崩壊につながりかねない。診療報酬による手当てを行うべきではないか」と指摘。これに対し迫井医療課長は、「有床診療所には、▽分娩を担当する施設▽単科の専門クリニック▽地域包括ケアシステムの拠点の役割を担う施設―などさまざまな機能がある。機能ごとに分析していく必要がある。とくに地域包括ケアシステムの拠点については療養病床の在り方とも密接に関連する。2018年度の同時改定に向けて議論してほしい」との考えを述べています。

 なお、外来医療に関しては、社会保障審議会・医療保険部会で「かかりつけ医を推進するために、大病院における紹介状なし患者の選定療養などの在り方を検討する」というテーマも浮上しています。8日の検討テーマは「小児」「高齢者」「調剤」「病診の機能分化」「診療科ごとのバランス」などですが、他の検討テーマもあわせて今後、第2弾、第3弾と議論を重ねる中で論点を絞り、具体的な改定項目に結び付けていくことになります。迫井医療課長は「外来患者の特性や病態に応じた評価」という大きな論点を提示しています。

診療場面でのICT活用、診療側と支払側で激論が交わされたが・・・

 8日の中医協では外来医療に関連して、「AIやICTを活用した診療」の評価も議題となりました。

 塩崎恭久厚生労働大臣は、昨年(2016年)12月に開かれた未来投資会議・構造改革徹底推進会合で、「遠隔診療のエビデンスを収集したうえで2018年度改定での対応を検討していく」「AIを用いた診療支援技術を確立し2020年度までの実装を目指す。2018年度改定でエビデンスをもとにインセンティブ付けの検討を行う」との考えを述べています。

塩崎厚労相はAIによる診療支援について、積極的に2018年度改定に向けて検討していく考えを示している
塩崎厚労相はAIによる診療支援について、積極的に2018年度改定に向けて検討していく考えを示している

 支払側の幸野庄司委員は、この塩崎厚労相の姿勢を高く評価。「ICTは、医師と患者のかかわり方を変えていくと思う。1月11日の中医協総会では『在宅医療においても半数が健康相談などにとどまっている』といったデータがあったが、生活習慣病治療などで外来受診する患者への医療行為の詳細も見ていく必要がある。一部の患者ではスマートフォンやテレビ電話で一定の診断・指導が行えるのではないか。慎重にではあるが、ICT活用を2018年度改定に向けて検討していくべきである」と訴えました。

 これに対し中川委員は、「塩崎厚労相のコメントは拙速すぎる」と批判したほか、幸野委員に対して「遠隔医療は『直接の対面診療を補完するもの』という大原則がある。定期的な検査・診断を行って初めて『病態が安定している』と判断できる。対面診療の中で患者の顔色や表情を見て、話し合う中で状態を判断する。それらすべてを含めて医療である。スマートフォンで血圧などのデータを送れば済むというのは医療ではない。ここは譲れない」と強く反論しています。

 幸野委員と中川委員・松本委員との議論を少し見てみましょう。1月11日の中医協総会でも、似たようなやり取りが行われています。

幸野委員:昨今は家庭用の血圧計も高性能である。状態が安定している高血圧患者が、『自宅で血圧を測り、データをかかりつけ医に送信し、必要な場合にはスマートフォンで指導を受ける』ケースと、『医院で血圧測定を受け、医師から対面で指導を受ける』ケースとどこが違うのか

中川委員:血圧は変動する。パッと測って判断するものではない

幸野委員:今はウェアラブル端末が開発され、外出先などでの血圧測定も可能になっている

松本委員:医師は可能な範囲で、待合室での状況、入室での歩き方などを総合的に観察して患者の状態をみている。血圧が安定しているから大丈夫というわけではない

幸野委員:医師が「状態が安定している」と判断した患者のほうから「ICTを活用してほしい」と要望があった場合、ICT活用すべきではないか

中川委員:話がかみ合わない。コメントは保留する

 

 相当の激論が交わされましたが、幸野委員を含めた支払側も「対面診療の原則を撤回せよ」などと主張しているわけではなく、中川委員ら診療側も「ICT活用は一切認められない」と反対しているわけでもありません。ICTの活用をどの程度のスピード感を持って、どの範囲にまで導入するのかという点で若干の温度差があるに過ぎないと見ることもでき、そうであれば、議論を続ける中で建設的な妥協点を見出すことはそれほど難しくないとも考えられるのではないでしょうか。

   

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