地域包括ケアシステムの深化、制度の持続可能性確保を目的に介護保険制度を改正―厚労省・坂口審議官



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 厚生労働省は19、20に2日間にわたって全国厚生労働関係部局長会議を開催。厚生労働行政の重要事項を、都道府県の保健福祉担当者に詳しく説明しています(厚労省のサイトはこちら)。

 老健局の重要事項については、厚生労働省大臣官房の坂口卓審議官(老健、障害保健福祉担当)(医政局、保険局併任)が次期介護保険制度改革を中心に説明しました。

1月19日に開催された全国厚生労働関係部局長会議で厚生労働省老健局の施策について説明した、坂口卓審議官
1月19日に開催された全国厚生労働関係部局長会議で厚生労働省老健局の施策について説明した、坂口卓審議官

この4月(2017年4月)から全市町村で要支援者の訪問介護などを総合事業に移管

 介護保険制度改革について、メディ・ウォッチでもお伝えしているとおり、社会保障審議会・介護保険部会で議論され(関連記事はこちら)、昨年末の予算案編成過程で塩崎恭久厚生労働大臣と麻生太郎財務大臣との折衝において詳細が固まっています(関連記事はこちら)。今後、与党(自由民主党、公明党)との調整、パブリックコメントなどを経て、今通常国会に改正法案が提出されます。

 改革の柱は、「地域包括ケアシステムの深化・推進」と「介護保険制度の持続可能性の確保」の2本と言えます。

 前者の地域包括ケアシステムについては、まず「保険者機能の強化」があげられます。介護保険は地域住民に最も身近な自治体である市町村が保険者となっており、「地域の課題を分析し、自立支援・重度化予防に向けた取り組み」を行うことが求められます。坂口審議官は具体的に、▼データに基づく地域課題の分析▼地域マネジメントに係る取組内容・目標の介護保険事業計画への記載▼実際の保険者機能の発揮・向上▼取組の評価―というPDCAサイクルを回すことが重要と強調。さらに取組内容などに応じて「経済的なインセンティブ」を付与するための法改正を行い、第7期介護保険事業計画、つまり2018年度から実施する方針を明確にしました。

 ただし市町村の規模などによっては、こうした取り組みの実施にハードルもあります。そのため都道府県の担当者に対し「データ分析のノウハウや、医師会など関係団体との連携について市町村を支援してほしい」と要望しています。

 

 また2014年度の前回介護保険制度改革では、要支援者への訪問・通所介護を市町村の総合事業に移管することとしており、2017年度からは全市町村で実施(移行に向けた経過措置が終了)することになっています。このため坂口審議官は「都道府県は全市町村での円滑な移行に向けて、助言・指導を行ってほしい」と要望するとともに、総合事業の検証手法を開発し、第7期・第8期の介護保険事業計画の中で定期的に総合事業の実施状況を検証していく方針も明らかにしています。

総合事業のロードマップその1
総合事業のロードマップその1
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 このほか、▼適切なケアマネジメントの推進に向けた「ケアマネジメント手法の標準化」(アセスメントの際の確認方法など)に2017年度から取り組む▼介護療養からの新たな転換先となる住まい・医療・介護の機能を併せ持った「新介護保険施設」の創設▼認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)の実践―などに積極的に取り組む考えも強調しました。

3割負担対象は約12万人だが、高額介護サービス費があるため実際の負担増は少ない

 介護保険制度改革のもう一つの柱である「持続可能性の確保」については、(1)利用者負担の見直し(2)高額介護サービス費の見直し(3)費用負担の見直し―などが行われます。

 (1)の利用者負担については、世代間・世代内の負担の公平性を確保することが目的で、特に所得の高い高齢者において「3割負担」を導入するものです。具体的な基準は今後政令で定められますが、坂口審議官は「年金収入+その他所得ベースで340万円以上」(年金収入だけの場合は344万円以上)という目安を紹介しました。なお、介護保険の受給者は現在496万人ですが、このうち3割負担が導入されるのは12万人程度で、全体の約3%にとどまります。また月額上限を定める高額介護サービス費があるため「直ちに、実際に負担増になる人は少ない」と坂口審議官は説明しています。

 また(2)の高額介護サービス費については、所得が「一般」区分の世帯について月額上限が3万7200円から4万4400円(医療保険の高額療養費と同額)に引き上げられますが、経過的な激変緩和措置として「1割負担者のみの世帯では、年間上限額を3年間設定する」ことになっています。

利用者負担の見直し内容
利用者負担の見直し内容

 (3)は、第2号被保険者の負担する保険料について、これまでに「加入する医療保険者の加入者数に応じた負担」(加入者割)から「加入する医療保険者の加入者数と負担能力に応じた負担」(総報酬割)に、段階的(2017年8月から2分の1総報酬割、19年度から4分の3総報酬割、20年度から全面総報酬割)に移行していくことになります。

 

 なお福祉用具については「同一製品でも大きな価格差がある」ことが問題視されており、坂口審議官は、▼製品ごとに国が平均価格を把握して公表する▼福祉用具専門相談員に貸与製品の価格だけでなく、全国平均価格や他製品を示すよう義務づける▼製品ごとの貸与価格上限を設定する―といった対応をとることを説明しました。もっともこれらには準備(例えば全国の価格調査など)が必要なため、2018年度から実施されます。

福祉用具貸与の見直し方向
福祉用具貸与の見直し方向

 

 このほか、介護離職ゼロに向けて「2017年度に臨時の介護報酬改定を行い、介護職員処遇改善加算に、新たなキャリアパス要件や月額3万7000円程度の処遇改善することなどを条件とした『新加算I』を創設する」ことが紹介されました。新キャリアパス要件(要件III)の詳細などは、今後、解釈通知やQ&Aなどで明らかにされます。

  

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