2018年度改定に向けた議論早くも始まる、第1弾は在宅医療の総論―中医協総会



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 2018年度診療報酬改定に向けた具体的な議論が早くも始まりました。11日に開かれた中央社会保険医療協議会総会では、「在宅医療」に関する総論的な議論を行いました(厚労省のサイトはこちら)。

 厚生労働省からは、▼多様化する在宅患者のニーズに応えることができるような新たなサービス提供のあり方▼地域の状況、個々の患者の状態、医療の内容、住まい・住まい方などを踏まえた評価の在り方―を検討してはどうかとの論点が示されました。

 支払側からは「医療資源は有限であり、ICTを活用すべき」との意見が、診療側からは「複数医療機関による訪問診療の在り方などを検討すべき」といった意見が出されています。

1月11日に開催された、「第343回 中央社会保険医療協議会 総会」
1月11日に開催された、「第343回 中央社会保険医療協議会 総会」

患者の多様なニーズに対応できるような新たな在宅サービス提供のあり方などを検討

 メディ・ウォッチでもお伝えしているとおり、2018年度は診療報酬・介護報酬の同時改定であることから、中医協では改定論議を前倒しで進めることとしています。11日には、「在宅医療」をテーマに議論が行われました。

 在宅医療については、2016年度の前回改定で大きな報酬体系の組み換えが行われました(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。その効果・影響については、今後の結果検証調査結果を待つ必要がありますが、厚労省は在宅医療における基本的な状況・課題として、次のような点を指摘しています。すでに2016年度改定論議で示された点もありますが、改めて整理してみます。

(1)高齢化の進展や高齢者の意識を踏まえると、在宅医療のニーズは今後も増大する

(2)在宅療養支援診療所(在支診)以外でも在宅医療を実施しており、在支診療でもすべての在宅医療サービスを提供しているわけではない

(3)看取りの半数超(51%)を、一部の医療機関(8%)がみている

在宅での看取りは、ごく一部の医療機関が多くを担っている(偏りがある)
在宅での看取りは、ごく一部の医療機関が多くを担っている(偏りがある)

(4)在宅で人工呼吸器などの医療を受けている小児が増加傾向にあるが、小児への訪問診療を行っている医療機関はごく一部(15歳未満への訪問診療は全体の2%程度、超重症児・準超重症児への訪問診療は1%程度)に限られる

(5)訪問診療の対象患者の85%は要介護者で、要介護度や認知症の状況はさまざま

訪問診療の対象患者には要介護高齢者が多く、要介護度や認知症の状況は多様である
訪問診療の対象患者には要介護高齢者が多く、要介護度や認知症の状況は多様である

(6)ごく一部だが「不適切な訪問診療」(通院が困難ではない患者への訪問診療)が存在する

(7)15%程度の訪問診療患者は重症(末期がんや難病など)で、半数超の患者には経鼻経管栄養や酸素療法、がん末期の疼痛管理などさまざまな医療提供がなされている

15%の在宅患者は重症だが、46%は健康相談のみの軽症者であるとうかがえる
15%の在宅患者は重症だが、46%は健康相談のみの軽症者であるとうかがえる

(8)訪問看護ステーション数は増加し、徐々に大規模が進んでいるが、整備状況には大きな地域差がある

訪問看護ステーション数は増加し、懸案であった大規模化も徐々に進んでいる
訪問看護ステーション数は増加し、懸案であった大規模化も徐々に進んでいる

訪問看護ステーションの整備状況には、大きな地域差があることが分かる
訪問看護ステーションの整備状況には、大きな地域差があることが分かる

(9)訪問看護ステーションの利用者の主傷病を見ると、「精神及び行動の障害」が多く(神経系疾患に次ぐ)、増加率も高い

 

 こうした点を踏まえ厚労省は、2018年度改定に向けて▼質・量・効率性を確保しつつ、多様化する患者のニーズに応えられる新たなサービス提供のあり方▼地域の状況、個々の患者の状態、医療内容、住まい・住まい方などを踏まえた評価のあり方―を検討してはどうかとの論点を示しました。

新たな在宅サービスとして、支払側は「ICTを活用した効率化」を提案

 前者の論点である「新たなサービス提供のあり方」について、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「医療資源は有限である。(7)からは半数弱の患者では、在宅医療として健康相談や血圧測定のみしか提供されておらず、ICTを活用した効率化を図る必要がある。例えば、多くの高齢者ではスマートフォンを利用しており、血圧を自宅で測定しメールなどで医師と連絡を取り合うような診療体制と評価の在り方を2025年に向けて今から仕込んでおく必要があるのではないか」と提案しました。これに対し診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)らは「医療の原則は対面診療であり、ICTはどれだけ進歩しても補完に過ぎない」と指摘しています。

 この点、厚労省保険局医療課の担当者は、「2016年度改定で導入された『心臓ペースメーカー等の遠隔モニタリングの評価』も新たな在宅サービスの1つと言えるかもしれない」とコメントしており、「新たなサービス提供のあり方」についてはさまざまな着眼点がありそうです。

 

 後者の論点は、2016年度改定における「重症の在宅患者の評価」という考え方をさらに進めるものと言えそうです。ここで「地域の状況」をどのような形で評価するのかが気になります。診療側の万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)は「全国一律の診療報酬での対応は難しいが、都市部と地方部では在宅医療の在り方は異なるのできめ細かな評価を検討してほしい」と要望しています。

 確かに、自転車やバイクなどで容易に隣家への訪問が可能な都市部と、自動車で長時間かけなければ隣家に赴けない地方部では、移動コストが大きく異なります。ただし、これをどのように診療報酬の中で評価していくのか、非常に難しいテーマと言えます。

訪問診療料の算定件数は伸びているが、在支診の届け出数は伸び悩み

 ところで厚労省の提示した資料では、訪問診療料などの算定件数は大きく伸びているものの、在支診の届け出数などに一定の「頭打ち」があるようにも見えます。この点について中川委員は「在宅専門医療機関を『地域医師会の協力・同意』などを要件として2016年度改定で導入したが、隙間を突いた在宅専門医療機関が跋扈している状況があるのかもしれない。今後、神経質なほど丁寧に議論していく必要がある」と指摘しています。

 この点について厚労省保険局医療課の迫井正深課長は、「指摘された点は掘り下げなければいけないと考えている。在宅専門医療機関の状況なども見据えて、2018年度改定に向けてどのような対応が必要か議論してほしい」とコメントしています。

 

 なお、診療側の松原謙二委員(日本医師会副会長)は、「複数の医療機関からの訪問診療などを認めてほしい」と要望しています。現行の診療報酬では、例えば訪問診療について「1人の患者に対して1つの医療機関の医師の指導管理の下に継続的に行われる」ものとして、複数医療機関での算定は認められていません。しかし松原委員は「褥瘡がある患者では皮膚科専門医との連携などが必要なケースがある」とし、認めるべきと訴えているのです。ただし、訪問診療の根幹に関わるテーマとも考えられ、どのように検討されるのか注目が集まります。

 

 また、訪問看護については、(8)のように「整備の地域差」が大きな課題の1つとなっています。この点について菊池令子専門委員(日本看護協会副会長)は、「訪問看護ステーションの新規開設は同じ都道府県の中でも都市部に集中し、地方では厳しいという。居住地に関わらず『在宅で療養できる』体制を整備するために、地方でも訪問看護ステーションを開設できるような報酬上の評価を考えてほしい。さらに、人口が少なく民間の訪問看護ステーション設置が難しい地域では、近隣の病院からの訪問看護が促されるような仕組みを検討してほしい」と要望しています。

オプジーボの薬価引き下げに伴い、2つのDPCコードは出来高算定に

 なおメディ・ウォッチでお伝えしたとおり、2月1日から抗がん剤オプジーボの価格が50%引き下げられます(関連記事はこちら)。

 中医協総会は、これにともなって、全ての診断群分類(DPCコード)において、オプジーボについて包括対象外(出来高払い)とする方針を了承しました。現在、オプジーボは高額薬剤ゆえ、多くのDPCコードで出来高算定となっており、包括評価されているDPCコードは悪性黒色腫の2つ(「080005xx99x2xx」と「080005xx97x2xx」)のみです。この2つに該当する診療行為は、2月1日からすべて出来高算定となります(オプジーボの薬剤料のみを出来高算定するわけではない点に注意)。

 

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