医療勤務環境の改善、ほとんどの病院院長が重要性を認識するが、取り組みにはバラつき―東京都



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 病院管理者のほとんどが「医療勤務環境改善」が重要と認識しているが、病院の規模でその理由は若干異なっている。また200床以上の病院では医療勤務環境改善に積極的に取り組む方針を示しているが、200床未満の病院の中には消極的な所も一部ある―。

 東京都が6日に公表した「医療勤務環境改善に関する病院管理者(院長)意識調査」結果から、こういった状況が明らかになりました(都のサイトはこちら)。

 東京都では「「ES(従業員満足度:Employee Satisfaction)なくしてCS(顧客満足度:Customer Satisfaction)なし」という点を強調しており、医療の質や安全性向上のためには医療勤務環境の改善が不可欠と言えます。

東京都の設置する「医療勤務環境改善支援センター」、認知度は4割未満

 この調査は、東京都が都内に所在する全病院の管理者を対象に行ったもので、301病院が回答しています。病床規模別に見ると、▼500床以上:40病院▼400床-499床:19病院▼300-399床:25病院▼200-299床:32病院▼100-199床:73病院▼100床未満:112病院―となっています(200床以上が116病院、200床未満が185病院)。

 まず医療勤務環境改善に関する管理者自身の考え方を見ると、200床以上では96.6%、200床未満では91.9%が重要と考えています。その理由については、▼優秀な人材の確保・定着▼医療の質向上▼モチベーションの向上▼スタッフの満足度向上▼院長の責務―といった点があげられていますが、200床未満の病院では特に▼優秀な人材の確保・定着▼モチベーションの向上▼医療の質向上―の3点に集中しています。規模の大きな病院では「特定の人材に頼らず、言わばシステムによって人材確保・定着や医療の質向上を担保している」と考えることができるかもしれません。

医療勤務環境改善の重要性はほとんどの病院院長が認識しているが、病床規模によってその理由に若干の違いがある
医療勤務環境改善の重要性はほとんどの病院院長が認識しているが、病床規模によってその理由に若干の違いがある

 

 このようにほとんどの管理者が「医療勤務環境改善が重要」と考えていますが、その取り組み状況を見ると、「既に取り組んでいる」のは200床以上で77.6%、200床未満では60%、「これから取り組む予定」なのは200床以上で19.8%、200床未満で28.1%、「取り組む予定なし」は200床以上で0.9%、200床未満で10.8%となっており、規模の小さな病院で遅れていることが明確になりました。「取り組む予定なし」の理由としては、▼費用負担▼進め方が分からない―といった点を抑えて、「自院では特に改善の必要なし」という声が多くなっていますが、よりよい環境を目指した努力が待たれます。

 

 さらに具体的な取り組み内容を見てみると、次のようになっています。

▼全てあるいは一部スタッフの時間外労働時間を把握している:200床以上では97.4%、200床未満では97.3%

▼全てあるいは一部スタッフの年次有給休暇の取得状況を把握している:200床以上では91.4%、200床未満で89.2%

▼「夏季休暇」や「リフレッシュ休暇」など、特定の目的のための法定外有給休暇制度がある:200床以上では95.7%、200床未満では90.8%

▼スタッフの健診受診率(2015年度)を把握している:200床以上では96.6%、200床未満では94.1%

▼ストレスチェックを実施している、または実施予定がある:200床以上では97.4%、200床未満では94.1%

▼パワーハラスメント(パワハラ)、セクシャルハラスメント(セクハラ)などの被害にあったスタッフが相談できる体制・制度がある:200床以上では87.1%、200床未満では69.2%

▼公平で透明性のある給与制度のための給与テーブル(職層や勤続年数などに応じた給与水準)がある:200床以上では92.2%、200床未満では69.2%

ハラスメント対策や給与テーブル作成については、200床未満の規模の小さな病院では遅れがちである
ハラスメント対策や給与テーブル作成については、200床未満の規模の小さな病院では遅れがちである

▼業務評価制度(職務能力や業務遂行状況に応じた評価制度)がある:200床以上では87.1%、200床未満では60.5%

▼職員満足度調査を行い、全職員または幹部に結果を公表している:200床以上では60.3%、200床未満では40.5%

業務評価制度の導入や、職員満足度調査の実施・活用についても、200床未満の規模の小さな病院で遅れがちである
業務評価制度の導入や、職員満足度調査の実施・活用についても、200床未満の規模の小さな病院で遅れがちである

 ハラスメント対策や給与テーブル・業務評価制度などの構築には専門家の力を借りることも必要となるため、規模の小さな病院では遅れがちのようです。厚生労働省もこうした点を認識し、都道府県に対して「医療従事者の勤務環境改善に向けた年次活動計画」を策定するよう求めています。さらに東京都では、専門家を配置した「東京都医療勤務環境改善支援センター」を設置し、医療機関を訪問した上でアドバイスを行ったり、組織力向上に向けた研修講師の派遣などを行っています。しかしセンターの認知度については、200床以上で39.7%、200床未満で38.4%にとどまっています。改善の必要性を認識しながら、費用面・マンパワー面などで躊躇している病院では、各都道府県の「医療勤務環境改善支援センター」(2016年9月時点で43都道府県で設置済)への相談を検討してみてはいかがでしょう(関連記事はこちらこちらこちら)。「ES(従業員満足度:Employee Satisfaction)なくしてCS(顧客満足度:Customer Satisfaction)なし」と言われるように、医療の質や安全性向上のためには医療勤務環境の改善も不可欠です。

 

 なお、2014年10月から順次施行されている改正医療法では、病院・診療所の管理者に対して医療勤務環境の改善に向けた努力義務を課しています。東京都に所在する病院の管理者では、200床以上の81.0%、200床未満の77.8%しかこの点を認識しておらず、留意が必要です。

 

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