特養ホーム、人員の安定・育成とケアの質向上は相互関連し、組織・チームで動けるかが鍵―福祉医療機構



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 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の46.9%で「介護人材が不足している」と考えており、うち約1割では入所者の受入れ制限を行っている。また、4割強の特養ホームでは2016年度の新卒者採用がゼロとなっており、新卒者採用が非常に厳しい―。

 福祉医療機構(WAM)が先頃公表したリサーチ・レポート「『介護人材に関するアンケート調査の結果について』から、こういった状況が明らかになりました(関連記事はこちらこちら)(WAMのサイトはこちら)。

 WAMでは、▼職員の育成体制▼ケアおよび職員の質の安定・向上▼人員の安定―が相互関連し、組織全体を育てるサイクルとして機能していると分析し、このサイクルの機能が、特定個人の能力や努力に依存したり、負担を集中させたりするのではなく、組織として、チームとして動くことができているか否か、組織の在り方を見つめ直す必要があると訴えています。

特養ホームの9割弱で処遇改善加算Iを取得し、キャリアアップ支援にも積極的

 レポートは、特養ホーム770施設に対するアンケート調査結果を分析したもので、形態別に見ると▼従来型47.0%▼個室ユニット型37.7%▼一部個室ユニット型15.3%―、規模別に見ると▼50-79人が40.5%▼80-99人が24.7%▼100人以上が19.5%▼29人以下10.9%が10.9%―などという構成です。

 2016年7月1日時点における職員の年齢構成を見ると、▼30歳未満が25.3%(男性9.5%、女性15.9%)▼30-39歳が24.8%(男性10.6%、女性14.2%)▼40-49歳が22.2%(男性6.3%、女性15.9%)▼50-59歳が17.5%(男性2.9%、女性14.5%)▼60-69歳が9.1%(男性1.5%、女性7.6%)▼70歳以上が1.1%(男性0.3%、女性0.8%)―となっています。WAMでは「女性は幅広い年齢層で均等に分布しているが、男性は40歳未満が3分の2を占めている」と指摘しています。

 介護職員処遇改善加算の取得状況を見ると、加算Iを取得している施設が圧倒的で87.8%、次いで加算IIの9.9%、加算IIIの0.6%、加算IVの0.4%となっていますが、加算を取得していない施設も1.2%あります。

 キャリアアップに向けた支援(資格取得支援)の状況を見ると、86.8%の施設で「実習日などにおける勤務調整」を行っているほか、46.1%で「資格取得費用の助成」、28.8%で「奨励金などの支給」を行っています。また、負担軽減に向けたICT導入状況については、▼利用料請求95.2%▼会計システム91.9%▼浴室のリフト66.2%▼介護・業務記録61.6%―などが目立ちます。

特養ホームの9割弱では、介護職員処遇改善加算Iを取得しているが、加算を取得していない施設も一部ある
特養ホームの9割弱では、介護職員処遇改善加算Iを取得しているが、加算を取得していない施設も一部ある

しかし、特養の半数で人材が不足し、うち1割では入所制限

 また自施設において「職員が充足しているか、不足しているか」を聞いたところ、46.9%と半数近くで「不足している」と考えていることが分かりました。不足している職種は、介護職員が97.2%と圧倒的で、ほかに看護職員43.5%、夜勤・宿直21.6%、リハ専門職(PT、OT)9.7%などです。

 さらに「職員が不足している」と考えている施設の11.9%で入所者の受入れを制限していることも分かりました(本体・ユニット一部での制限が5.5%、併設施設での制限が6.4%)。WAMは「人員不足が事業の継続性にも影響を与えている」とコメントしています。

特養ホームの半数弱が「人員不足」を感じており、うち1割程度で入所者制限を行っている
特養ホームの半数弱が「人員不足」を感じており、うち1割程度で入所者制限を行っている

 こうした人材不足に対処するための採用状況を見ると、40.5%の施設では2016年春に新卒者の採用が行えず(ゼロ人)、また新卒者以外についても2015年度実績で「1-3人」(30.4%)「4-6人」(30.3%)にとどまっています。

 一方で、2015年度の退職状況を見ると、「4-6人」が32.2%、「1-3人」が27.0%となっており、「採用した分、退職していってしまう」ことが伺えます。退職理由(最も大きなもの)については、▼転職33.0%▼人間関係28.5%▼体調不良11.3%▼賃金水準5.4%―などが目立ちます。

 また「採用経路」別の有効性(実際に効果があったとの回答割合)を見ると、▼ハローワーク▼資格取得実習受入れ▼学校訪問(就職課)▼職員からの紹介―などで高くなっており、かつこれらは多くの施設で既に利用されています。一方、▼新卒者採用サイト▼養成校教員などの推薦・紹介▼人材紹介会社▼新聞折込広告▼転職サイト▼求人情報誌▼アルバイト求人サイト―では、有料なものが多く利用をためらう施設も少なくないものの、有効性が高いことが分かっており、積極的に検討すべきでしょう。なお、新卒者、中途者、非正規雇用のそれぞれで、採用経路別の有効性は異なっているので、その点にも留意が必要です。

人材の採用経路別に見ると有効性には差があり、有効性が高い経路の利用が十分でないケースもある
人材の採用経路別に見ると有効性には差があり、有効性が高い経路の利用が十分でないケースもある

「人員の確保・育成」と「ケアの質の確保・向上」とは相互関連

 最後に「ケアおよび職員の質」と「人員の充足状況」との関係を見ると、「質が向上した」と考えている施設では人員が比較的充足しており、逆に「質が低下した」と考えている施設では人員不足を訴える傾向が高いことも分かりました。

 WAMでは「施設内の組織的な職員育成体制が『施設のケアおよび職員の質』、ひいては人員の確保状況とも関連してくる。▼職員の育成体制▼ケアおよび職員の質の安定・向上▼人員の安定―が相互関連し、組織全体を育てるサイクルとして機能している」と分析。その上で、「このサイクルを機能させるうえでは、特定個人の能力や努力に依存したり、負担を集中させたりするのではなく、組織として、チームとして動くことができるか否かが鍵となる。特養ホームにおいては、組織の在り方について見つめ直す必要がある」と強調しています。2017年度にはさらなる介護職員の処遇改善を目指した臨時の介護報酬改定(介護職員処遇改善加算の新区分創設)が行われるため、今後の動向にも注目する必要があります(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

 

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