設備投資せず現預金を保有する病院、設備投資する病院に比べ経営が悪化―福祉医療機構



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 病院の経営状況を分析すると、「資金に余裕があるものの設備投資を行わない病院では、後に業績が大きく低下する」傾向にあるため、環境の変化や病院の発展のために現預金は積極的に活用していくべきである―。

 福祉医療機構(WAM)は、21日に公表したリサーチレポート「平成27年度病院の経営状況について」の中でこのように提言しています(関連記事はこちら)(WAMのサイトはこちら)。

設備投資せずに医業収益は拡大せず、費用増への対応もできず経営が悪化

 このリサーチレポートはWAMが貸し付けを行っている1579病院を対象とした分析結果で、内訳は▼一般病院(全病床に占める一般病床の割合が50%超)773施設▼療養型病院(同じく療養病床の割合が50%超)520施設▼精神科病院(同じく精神病床の割合が80%超)286―となっています。病床規模別に見ると、全体の82.5%、一般病院では81.8%、療養型病院では93.9%、精神科病院では63.6%が299床以下という状況で、WAMは「2015年医療施設動態調査では『病院の82.1%が299床以下』であり、母集団に近い」と判断しています。

 WAMが病院類型別に投資行動の違いを分析したところ、▼一般病院では借り入れをしながら設備投資をしている▼療養型病院、精神科病院では利益を現預金で保有する―傾向があることが分かりました。もちろん手術などの多い一般病院では機材などのアップデートが常に必要であるという機能の差によるところも大きいと考えられます。

 この点についてWAMは「無借金病院=設備投資を行っていない病院」、「有借金病院=設備投資を行っている病院」と位置づけ、それぞれの経営状況の変化を見ています。そこでは、無借金経営の病院のほうが、▼医業収益の増加の割合が小さい▼医業費用の増加の割合が大きい▼赤字割合が高い▼医業利益率が低い―という具合に、経営状況が悪化していることが伺えました。WAMは、「医業収益を増加させるには、設備投資が欠かせない」というデータを引き合いに出し、「積極的な設備投資がなかったため医業収益が伸びず、増加する医業費用に対応ができなかったことで経営状況が大きく低下した」と分析。さらに「物価上昇に備えて自己資金を蓄積する」ことも選択肢の1つとした上で、「将来の経営環境の変化への柔軟な対応や病院の発展を考える上では、収益を増加させるために設備投資などで現預金を活用する視点が欠かせない」と提言しています。

無借金病院(設備投資を行っていないと仮定)と、有借金病院(設備投資を行っていると仮定)の経営状況を比べると、有借金病院のほうが良好な状況にある
無借金病院(設備投資を行っていないと仮定)と、有借金病院(設備投資を行っていると仮定)の経営状況を比べると、有借金病院のほうが良好な状況にある
医業収益と固定資産(いわば設備投資)との間には正の相関があることがわかる
医業収益と固定資産(いわば設備投資)との間には正の相関があることがわかる

赤字病院の割合は徐々に増加、人件費増が原因の一つ

 また2015年度における病院の機能性状況を見ると、一般病院では▼病床1床当たりの年間医業収益は前年度から2.9%増加し2004万6000円▼入院単価は1.4%増の4万6911円▼外来単価は4.0%増の1万2177円―、療養型病院では▼病床1床当たりの年間医業収益は2.8%増加し993万円▼入院単価は3.3%増の2万3748円▼外来単価は2.4%増の9083円―などとなっています。

2015年度(平成27年度)の病院の機能性状況
2015年度(平成27年度)の病院の機能性状況

 2015年度の収支に目を移すと、一般病院では▼医業収益対医業利益率は前年度と変わらず1.1%▼経常収益対経常利益率も前年度と変わらず1.5%▼従事者1人当たり年間医業収益は前年度から2万4000円増の1195万3000円―、療養型病院では▼医業収益対医業利益率は前年度から0.1ポイント減の5.6%▼経常収益対経常利益率は0.3ポイント減の6.3%▼従事者1人当たり年間医業収益は1万3000円増の899万9000円―などという状況です。2015年度は診療報酬改定の中間年ということもあり、大きな変化はないようです。

2015年度(平成27年度)の病院経営状況
2015年度(平成27年度)の病院経営状況

 さらに赤字病院の割合を見てみると、一般病院では前年度から1.1ポイント減少して39.6%、療養型病院では2.3ポイント増加して21.0%、精神科病院では1.2ポイント減少して26.6%となっています。経年変化を見ると、徐々に赤字病院の割合が増加していることが伺えます。この点についてWAMでは、「医業費用の伸び」が「医業収益の伸び」を上回っている、とくに「人件費の増加」が大きな要因になっていると指摘しています。

赤字病院の割合は、いずれの病院類型でも徐々に増加しており、その要因として人件費増があると考えられる
赤字病院の割合は、いずれの病院類型でも徐々に増加しており、その要因として人件費増があると考えられる

 

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