介護療養病床など、医療・介護に「生活機能」を備えた新たな介護保険施設などヘの転換を了承―療養病床特別部会



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 介護療養病床などからの新たな転換先となる「新介護保険施設」について、社会保障審議会「療養病床の在り方等に関する特別部会」が7日に意見を取りまとめました。

 争点として残っていた「転換準備期間」や「新設などの制限期間」については、意見の集約が叶わず両論併記となっており、今後、法案作成の中で最終調整が行われる見込みです。

12月7日に開催された、「第7回 療養病床の在り方等に関する特別部会」
12月7日に開催された、「第7回 療養病床の在り方等に関する特別部会」

医療・介護・生活の3機能を備える新たな介護保険施設を創設

 「介護療養病床」と「看護配置4対1などの基準を満たさない医療療養病床」については、設置根拠となる経過措置規定が2018年3月をもって切れてしまいます。厚生労働省では、「転換型介護老人保健施設」などを用意し、ここへの転換を促しましたが、思うように進んでいません。そこで、「療養病床の在り方等に関する検討会」や特別部会を設置し「新たな転換先」(新類型)の設置に向けた議論を行っているのです。

 特別部会では、「医療内包型の新たな施設」を創設するとともに、「医療機関と居住スペース(例えば特定施設入居者生活介護の指定を受ける有料老人ホームなど)」との併設を選択しやすくするための措置を設けることを決定しました。

 前者の「医療内包型の新たな施設」について、改めて具体的な姿を振り返ってみましょう。

介護療養に生活機能をプラスアルファした新たな介護保険施設を創設し、利用者像によって2つに区分する考えが示された
介護療養に生活機能をプラスアルファした新たな介護保険施設を創設し、利用者像によって2つに区分する考えが示された

 これは、▼現在の介護療養病床が持つ「日常的な医学管理が必要な重介護者の受入れ」「看取り・ターミナル」などの機能▼入院生活が長期にわたり、実質的に生活の場になっている実態を踏まえた「生活施設」としての機能―を兼ね備えた「新たな介護保険施設」(特別養護老人ホーム、老人保健施設に続くもの)を創設するものです。介護療養病床の機能強化型A・Bからの転換をイメージすると分かりやすいのではないでしょうか。

 介護保険法の改正(第5章第5節に新たに第3款を設けるイメージ)とともに、医療を提供する新たな施設の創設ゆえ、医療法の改正(医療法の第1条の2第2項を改正するイメージ)も行われる見込みです。

 入所者の状態に応じて、【I型】重篤な身体疾患を有する者・身体合併症を有する認知症高齢者など(現在の療養機能強化型A、Bに相当する者)が入所する施設【II型】I型と比べて、容体が比較的安定した者が入所する施設―に区分されることとなり、ここは今後、社会保障審議会の介護給付費分科会で具体的な施設基準などを議論することになります。

 新類型に求められる最低限の構造設備としては、▼1室当たり定員4名以下、かつ入所者1人当たり8平米▼多床室であっても、家具・パーテーションなどで間仕切りをし、プライバシーに配慮する―という基準が設けられる見込みです。この点、特別部会では「生活機能を持つ施設であるから、原則として個室を目指すべき」との意見と、「円滑な介護療養などからの転換を考慮し、大規模修繕までは6.4平米・4人部屋を医事すべき」との意見が拮抗しており、集約は叶いませんでした。今後の法案策定過程において調整が行われることでしょう。また詳細な基準は介護給付費分科会で議論されます。

円滑な転換に向けた転換準備期間、3年とすべきか6年とすべきかで意見集約に至らず

 介護療養などは、新類型などに順次転換していくことになりますが、報酬や施設基準が決まるのは2018年2月となります。各施設では、これを睨みながら「どの施設に転換すべきか」を考慮し、さらに必要な準備(例えば人員の確保など)をしなければらないので、「転換に向けた準備期間」が一定程度必要となります。

 この期間をどの程度にすべきかについて、特別部会では「できるだけ短く(例えば3年程度)」とする意見と、「十分な時間をとるべき(例えば6年程度)」とする意見が対立しており、集約には至りませんでした。法案策定過程での調整を待つ必要があります(関連記事はこちらこちら)。

介護療養などから新類型に転換する場合でも、一定の転換のための経過期間が必要となり、厚労省は介護保険事業計画期間となる「3年」を一つの目安にしていると考えられる
介護療養などから新類型に転換する場合でも、一定の転換のための経過期間が必要となり、厚労省は介護保険事業計画期間となる「3年」を一つの目安にしていると考えられる

 さらに、新類型を巡っては「一般病床などからの参入制限をどの程度の期間、設定すべきか」という争点もあります。特別部会では、新類型への転換・参入の優先順位について(1)介護療養からの転換(2)医療療養からの転換(3)その他(一般病床など)からの参入―という概ねの合意があったと考えられます。しかし、(3)の「その他からの参入」について、上記と同様に「3年程度」と「6年程度」という複数の意見が拮抗しており、やはり法案策定を待つことになります(関連記事はこちらこちら)。

 この点について、7日の特別部会で鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)は、「一般から医療療養への駆け込み転換があるかもしれない」点を危惧し、「既存の介護療養・医療療養からの転換を優先すべき」と強く求めています。

 

 特別部会では、新類型のほかに「医療機関と居住スペースの併設」を選択しやすくする措置(要件緩和など)を設ける方向も決定しました。例えば、看護配置4対1などを満たしていない医療療養が、一部の病棟にスタッフを集約して基準を満たすことで医療機関を維持し、残りの病棟を居住スペース(例えば特定施設入居者生活介護の指定を受ける有料老人ホームなど)に転換するといったイメージです。この緩和措置に関して武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)は、「円滑な移行に向け、やはり6.4平米・4人部屋を維持できるような緩和をすべき」と求めましたが、具体的な緩和要件などは、今後、介護給付費分科会で議論されることになります。

医療外付け型では、同一建物内でも医療機関と居住スペースの併設を認めることになる
医療外付け型では、同一建物内でも医療機関と居住スペースの併設を認めることになる

 

 なお、看護配置4対1などを満たさない医療療養の多くは、25対1療養病棟入院基本料(療養病棟入院基本料2)を算定していると考えられます。これにどう対応していくのかは、今後、中央社会保険医療協議会で議論することになります。

新たな介護保険施設、転換後も「病院」を名乗れるような工夫も検討

 特別部会では、介護療養から新類型に移行する際に、「病院」を名乗れることを考慮してはどうかとの指摘も出されました。「病院の医師」「病院の看護師」などとして働いてきたスタッフが、突然の名称変更でモチベーションを落とさないように配慮すべき、との見解に基づくものです。

 この点、厚労省保険局医療介護連携政策課の黒田秀郎課長と、老健局老人保険課の鈴木健彦課長は「一部または全部を新類型に転換する場合に、全体として『病院』の名称を維持できる」ような工夫を今後検討していく考えを示しています。

 ところで、医療法第3条第1項には「病院又は診療所でないものは、これに病院、病院分院、産院、療養所、診療所、診察所、医院その他病院又は診療所に紛らわしい名称を附けてはならない」との名称独占規定があり、上記の工夫をどのように行うのか(この条文を改正するのか)、今後の法案が注目されます。

病院団体からは「介護給付費分科会」への委員参画を求める意見も

 

 また、このように見ると、新類型などの詳細(人員配置や施設基準など)は、いずれも今後、介護給付費分科会において、2018年度の介護報酬・診療報酬同時改定に向けて議論されることになります。この点、武久委員や西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)、加納繁照委員(日本医療法人協会会長)、松本隆利委員(社会医療法人財団新和会理事長、日本病院会理事)らは、「新類型ヘ転換を迫られているのは病院である。介護給付費分科会に病院代表の委員を参加させるべき」と強く求めました。ただし、他の関係団体の要望や、費用負担者側の委員との人数バランスなども考慮しなければならず、こちらの調整も難しそうです。

 

 なお、老人性認知症疾患療養病棟の取り扱いについて、鈴木老人保健課長は「機能の重要性は認識しており、現行のまま維持すべきかも含めて、関係者と密接に協議して対応していきたい」との見解を示しています。

 

 特別部会の意見(議論の整理)は、社会保障審議会の介護保険部会・医療部会・医療保険部会に報告され、年明けから法案策定が厚労省内部で進められます。介護保険部会でも議論されている介護保険法改正案が、例えば2017年度の予算関連法案となれば、2月中から下旬には具体的な姿が明らかになります。

  

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