介護療養などの新たな転換先、転換準備期間と新設制限期間が争点に―社保審・療養病床特別部会



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 介護療養病床や介護配置4対1などを満たさない医療療養病床などの新たな転換先(新類型)の創設に向けた議論が煮詰まってきました。新類型の施設要件や人員配置要件の詳細などについては大枠で合意されつつあり、残る争点は専ら「転換準備期間をどの程度(3年あるいは6年)に設定するべきか」、「新設や一般病床などから転換を制限する期間をどの程度に設定するべきか」の2点に絞られたと言ってよいでしょう(関連記事はこちら)。

11月30日に開催された、「第6回 社会保障審議会 療養病床の在り方等に関する特別部会」
11月30日に開催された、「第6回 社会保障審議会 療養病床の在り方等に関する特別部会」

新類型、医療・介護・住まいの機能を兼ね備える

 11月30日に開催された社会保障審議会の「療養病床の在り方等に関する特別部会」では、これまでの議論を踏まえた「議論の整理案」が厚生労働省から提示されました。大枠は10月26日に示された素案を踏まえた内容です。

 まず新類型(医療内包型)は、▼現在の介護療養病床が持つ「日常的な医学管理が必要な重介護者の受入れ」「看取り・ターミナル」などの機能▼入院生活が長期にわたり、実質的に生活の場になっている実態を踏まえた「生活施設」としての機能―を兼ね備えた「新たな介護保険施設」(特別養護老人ホーム、老人保健施設に続くもの)となります。介護保険施設であることから、「補足給付」(低所得者に対する居住費負担を補填する給付)の対象となる見込みです。

 主な入所者像に応じて、(1)介護療養の療養機能強化型ABに相当する人が入所する「介護療養病床相当」の施設【I型】(2)(1)よりも比較的容体が安定した人が入所する「老人保健施設相当以上」の施設【II型】―の2つに区分されます。

 介護報酬や施設要件(床面積や構造設備など)・人員配置要件(看護、介護配置など)の詳細は今後、社会保障審議会の介護給付費分科会で議論されますが、床面積について厚労省は「1室当たり定員4名以下、かつ、入所者1人当たり8平米以上」とすることが適当であるとの原則を打ち出しました。ただし、多床室の場合でも▼家具▼パーテーション―などで間仕切りをするなどし、プライバシーに配慮した療養環境を整備すべきことを述べています。さらに、▼個室などの生活環境を改善する取り組み▼身体抑制廃止の取り組み―などを推進するために、これらの適切な評価を検討すべきとも指摘しています。

介護療養に生活機能をプラスアルファした新たな介護保険施設を創設し、利用者像によって2つに区分する考えが示された
介護療養に生活機能をプラスアルファした新たな介護保険施設を創設し、利用者像によって2つに区分する考えが示された

 また、より多様な選択肢を用意することが「介護療養病床などからの転換」を円滑に進めることになるため、医療機関と居住スペースとの併設(医療外付け型)が可能なことも明確にされる見込みです。

医療外付け型では、同一建物内でも医療機関と居住スペースの併設を認めることになる
医療外付け型では、同一建物内でも医療機関と居住スペースの併設を認めることになる

転換準備期間、3年とすべきか6年とすべきか

 ところで、新類型の介護報酬設定は早くても2018年度の介護報酬改定時となります(報酬の告示は2018年2月頃の見込み)。一方、介護療養病床などの設置根拠(介護保険法の経過措置など)は2017年度末(2018年3月末)で切れるため、何の規定も置かなければ「2か月弱」で転換方針を決め、必要な準備(例えば人員確保など)をしなければいけないことになります。

 これはあまりに非現実的なスケジュールであることから、「転換に向けた準備期間」(各種の報酬を比較しどこに転換するかを検討する時間や、人員確保などの時間)を一定程度確保する必要があります。この期間をどの程度にすべきかについて、現在▼3年間(介護保険事業計画の対象期間)▼6年間(介護保険事業計画2期分、次の同時改定までの期間)―の2案が浮上しています。

介護療養などから新類型に転換する場合でも、一定の転換のための経過期間が必要となり、厚労省は介護保険事業計画期間となる「3年」を一つの目安にしていると考えられる
介護療養などから新類型に転換する場合でも、一定の転換のための経過期間が必要となり、厚労省は介護保険事業計画期間となる「3年」を一つの目安にしていると考えられる

 また看護配置4対1などの基準を満たさない医療療養病床(介護療養と同じく2018年3月で設置根拠が切れる)についても、厚労省医政局総務課の中村博治課長は「20対1医療療養への移行や新類型への転換などに向けた準備期間を設定する必要がある」と説明しています。

 前者の3年間を提唱する白川修二委員(健康保険組合連合会副会長)は、「現在の介護療養病床に大きな影響が出るような報酬設定などは行われないと考えられる。1-2年で転換計画を出してもらい、3年目に転換してもらえば十分ではないか」との考えを示しました。また同じく費用負担者代表である小林剛委員(全国健康保険協会理事長)も早期の転換が必要とし、「早期に転換するほど大きな恩恵を受けられるようなインセンティブを検討してはどうか」とも提案しています。

 一方、医療提供者の委員である鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)や武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)、加納繁照委員(日本医療法人協会会長)、松本隆利委員(日本病院会理事・社会医療法人財団新和会理事長)らは、十分な準備期間が必要として「6年の転換準備期間」を強く求めています。

 なお、この問題について土居丈朗委員(慶應義塾大学経済学部教授)は、「どの程度の転換準備期間が必要かは『介護報酬』決定(前述のように2018年2月)まで明確にならない(仮に現行の介護療養から大きく変わるのであれば長期間の準備期間が必要だが、大きな変化がないのであれば短期間でもよいと判断できる)が、一方で移行期間は介護保険法改正案に明確に規定しなければならない」と、この問題の難しさを強調しています。

一般病床などからの転換制限期間、どの程度に設定するべきか

 新類型は、「介護療養病床などかの転換先」として議論されていますが、その過程で「医療、介護、住まい」の3機能を持った新たな施設類型は、今後の高齢化の進展を考えたときに「非常に魅力的」(田中滋委員:慶應義塾大学名誉教授)とし、一般病床などからの転換や、新設も認めるべきではないかとの要望が出ています。

 この点「介護療養病床などからの転換に限定すべき」との意見もありましたが、議論の中で「限定はせず、一般病床からの転換や新設も認めてよい」との方向で収束しつつあります。この背景には、「新類型は介護保険法の本則に規定する予定であり、恒久的な施設となるため、限定はできない」という点もあります。

 一方で「新設などを認めてもよいが、『法律上の設置根拠がなくなる介護療養病床など』からの転換を優先する」という点でも委員間で合意があると考えられます。

 つまり「一般病床からの転換や新設は一定期間に限り認めない(転換制限)」という合意が一定程度できており、議論の争点は「転換制限の期間をどの程度に設定するべきか」というところに移っているのです。

 この点について鈴木邦彦委員らは「転換準備期間と同じく6年間とすべき」と主張していますが、岩村正彦委員(東京大学大学院法学政治学研究科教授)は「過度の制限は憲法22条第1項の『営業の自由』に抵触する可能性もあり、3年程度が限界ではないか」との考えを示しています。

 厚労省保険局医療介護連携政策課の黒田秀郎課長は「転換準備期間と転換制限期間は独立した論点である」と説明しており、両期間は必ずしも一致させる必要はないようです。また、厚労省大臣官房の濵谷浩樹審議官(医療介護連携担当)(医政局、老健局併任)は「転換制限期間を法律に書くことはできず、介護保険事業計画の『総量規制』の中で対応することになる」と説明しています。

 介護療養病床からの転換では、後述するように「大規模修繕までは6.4平米・4人部屋」が維持される見込みです。すると大多数の新類型で「個室の施設」はないことになります。この点について岩村委員は「利用者負担を考えなければ、個室を望むと思う。私も高齢になれば個室を希望する。転換制限期間を長くすれば、個室施設の新設ができず、利用者のニーズを阻害してしまう点も考慮すべき」とコメントしています。

生活機能を重視すれば「個室」が望ましいが、円滑な転換のためにどう考えるか

 介護療養病床などからの転換を円滑に進めるためには、できるだけ「大きな変更」(とくに建物の構造)をしないことが求められます。部会でも鈴木邦彦委員や武久委員の要望を受け、厚労省は「6.4平米・4人部屋」の存続を大規模修繕まで認めることなどを、今後、介護給付費分科会で議論していく方針を示しています。

 鈴木邦彦委員らはさらに、大都市部では容積率基準が厳しいことから▼サテライト型を認める▼大規模修繕後も6.4平米・4人部屋を特例的に認める―ことなどを求めています。

 こうした指摘に理解を示す委員も少なくありませんが、岩村委員や井上由起子委員(日本社会事業大学専門職大学院教授)らは「新類型は『生活機能』を重視するのであるから、個室を目指すべきであり、大都市の特例は認めるべきではない」と反対しています。

 

 特別部会ではこうした争点について最終的な調整を行い、12月上旬の次回会合で意見(議論の整理)を取りまとめる予定です。

  

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