来年度から、介護職員の経験や評価などに基づく『定期昇給』を要件とする新処遇改善加算―介護給付費分科会



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 介護職員について、「▼経験年数▼資格▼事業所内での評価―のいずれかに応じた昇給」の仕組みを設けることを要件とした、新たな介護職員処遇改善加算の区分を設ける―。

 16日に開かれた社会保障審議会の介護給付費分科会では、こういった方向が概ね了承されました。介護人材の確保に向けた「期中改定」の大枠が固まった格好です(関連記事はこちらこちら)。

11月16日に開催された、「第132回 社会保障審議会 介護給付費分科会」
11月16日に開催された、「第132回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

処遇改善加算だけでは介護人材の確保・定着は難しいとの指摘も多数

 介護人材の確保・定着に向けて、厚生労働省は▼2009年度の介護職員処遇改善交付金(後に加算に組み換え)▼2012年度の介護職員処遇改善加算の創設と、その後の拡充―などの対応を講じています。しかし安倍晋三内閣総理大臣は処遇改善が不十分と考え、「技能や経験に応じた給料アップの仕組みを創る」などの処遇改善を進め、アベノミクスの新たな3本の矢の1つである「介護離職ゼロ」を実現することを強調。6月2日に閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」などでは、「介護人材の処遇について、2017年度からキャリアアップの仕組みを構築し、月額平均1万円相当の改善を行う」方針を打ち出しています。

 厚労省はこの方針に沿って、「2017年度に介護職員の処遇改善に向けた臨時の介護報酬改定を行う」ことを決定。10月12日の前回会合では、多くの委員から「定期昇給の実施を要件とすべき」「介護福祉士の評価を充実すべき」といった意見が出されました。

 厚労省はこうした意見を踏まえ、16日の分科会に次のような提案を行っています。

▼現行の処遇改善加算(I、II、III、IV)の上に、月額3万7000円相当の上乗せを行うことを要件の1つとする新たな加算区分を設ける

▼新加算区分では、現在の加算Iの要件(キャリアパス要件I、キャリアパス要件II、職場環境要件のすべてを満たす)に加えて、新たな『キャリアパス要件III』をも満たすことを求める

▼『キャリアパス要件III』は、事業所内で(1)経験年数(2)資格(3)事業所内での評価―のいずれか(組み合わせも可能)に応じた昇給(基本給、手当、賞与などを問わない)の仕組みを設け、これを就業規則等の明確な根拠規定の書面での整備・全ての介護職員への周知していることとする

来年度(2017年度)の臨時介護報酬改定によって、月額3万7000円相当の賃金アップや、新たなキャリアパス要件IIIなどを要件とする介護職員処遇改善加算の新区分を創設する
来年度(2017年度)の臨時介護報酬改定によって、月額3万7000円相当の賃金アップや、新たなキャリアパス要件IIIなどを要件とする介護職員処遇改善加算の新区分を創設する

キャリアパス要件IIIは、事業所において1)経験年数(2)資格(3)事業所内での評価―のいずれかに基づく昇給を行っていること、などと設定される
キャリアパス要件IIIは、事業所において1)経験年数(2)資格(3)事業所内での評価―のいずれかに基づく昇給を行っていること、などと設定される

 また厚労省老健局老人保健課の鈴木健彦課長は、処遇改善加算について「介護職員以外への適用」や「賃金以外の職場環境改善などの費用への適用」といった要望があることを紹介した上で、「介護人材の賃金改善に確実に結びつくことが重要であるとの考えから、処遇改善加算の対象職員や対象費用の範囲については現行の取扱いを維持する」(対象職種などは拡大しない)こととしてはどうかと提案しました。もっとも、2018年度の介護報酬改定に向け、処遇改善加算そのものの在り方を引き続き検討していくことになります。

 この提案に対し細かい注文こそ出たものの、明確な反対意見は出ず、鈴木老人保健課長は「方向は了承されたのではないか」との見解を述べています。

 注文内容としては、「勤続年数や資格取得を給与に確実に結びつけるのは難しい、人事考課を行い昇給に結びつけている事業所を優先的に評価すべき」(鈴木邦彦委員:日本医師会常任理事)といった点が目立ちました。稲葉雅之委員(民間介護事業推進委員会代表委員)も同旨の見解を述べたほか、堀田聰子委員(国際医療福祉大学大学院教授)も「経験年数や資格が必ずしも質の高いケアに結びついているとは言えない」とし、制度の細部について慎重な検討や工夫が必要との考えを示しています。

 

 なお、今後の処遇改善加算そのものの在り方に関する意見として、「給与増だけでは介護人材の確保・定着に十分結びつかない」という意見も複数出されました。東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)は「介護福祉士は右肩上がりで増加しているが、養成施設ルートは十分に伸びていない。処遇改善加算では、若者を呼ぶ効果がない。介護福祉士の負担軽減に向け、介護助手の活用などを検討すべき」と提案。

介護福祉士登録者数は増えているが、養成施設ルートの伸びは小さい
介護福祉士登録者数は増えているが、養成施設ルートの伸びは小さい

 松田晋哉委員(産業医科大学教授)も負担軽減の重要性を指摘するとともに、「事業所の規模が拡大すれば、1人1人にかかる間接業務負担が減少する」とし、訪問系事業所においても規模の拡大や、デイサービスの定員緩和などを目指していくべきと提案しています。

 

 このほか、「処遇改善はそもそも介護報酬の財源を用いて行うべきではない」(本多伸行委員:健康保険組合連合会理事、小林剛委員:全国健康保険協会理事長ら)、「バラマキとも言える処遇改善加算IVを見直すべき」(本多委員、齋藤訓子委員:日本看護協会常任理事ら)といった意見が出されています。これらは、2018年度改定に向けて再度議論されることになります。

地域区分、2018年度改定で、新たに「完全囲まれルール」という特例を創設

 16日の分科会では、「地域区分」の見直しについても議論されました。介護報酬では、診療報酬と異なり、1単位当たりの単価が地域によって異なります。これは、地域による給与水準の差などを反映し、介護人材の確保・定着を促進することや、保険料水準の適正化を図る狙いがあります。例えば、「給与水準の高い東京23区では、他の地域よりも単価を高くし、介護以外の職種に貴重な人材が流れてしまわないようにする」といったイメージです。

介護報酬では、診療報酬と異なり、1単位当たりの「単価」が地域ごとに異なる
介護報酬では、診療報酬と異なり、1単位当たりの「単価」が地域ごとに異なる

 現在、地域区分は「国家公務員・地方公務員の地域手当」をベースに設定し、「地域手当がないが、隣接する複数の地域に地域手当がある場合の特例」などが設けられていますが、一部の市町村では「単価の高い地域に囲まれ、介護人材の確保が難しいので、地域区分の設定値を上げたい」あるいは「単価の低い地域に囲まれ、保険料の適正化を図りたいので、地域区分の設定値を下げたい」といった要望もあります。

現在(2015年度介護報酬改定後)の地域区分の全体像
現在(2015年度介護報酬改定後)の地域区分の全体像

 そこで鈴木老人保健課長は、新たな特例「完全囲まれルール」を設定することを提案しています。隣接地域すべての地域区分設定値が、自地域の設定値よりも1区分以上高い(あるいは低い)地域において、隣接地域とのバランスをとることを可能とするものです。適用対象は最大で69自治体(高いところに囲まれた15自治体と、低いところに囲まれた54自治体)となります。この提案は概ね了承され、今後、他の介護報酬とのバランスを勘案して(新たな財源が必要とならないように)2018年度の介護報酬に合わせて実施される見込みです。

地域区分に関する新たな特例ルール(完全囲まれルール)の概要
地域区分に関する新たな特例ルール(完全囲まれルール)の概要

完全囲まれルールの対象は、最大で69自治体(高いところに囲まれている15と、低いところに囲まれている54)
完全囲まれルールの対象は、最大で69自治体(高いところに囲まれている15と、低いところに囲まれている54)

 

 なお、地域区分に関する経過措置(2015年度改定前の設定値と新たな設定値の範囲内で選択し、激変を避ける)について、3年間の延長(2021年度改定まで)を行う方針も概ね了承されています。

  

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