在宅医療・介護連携、連携の手順を明確にし、都道府県による市町村支援を充実―社保審・介護保険部会



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 在宅医療・介護連携を推進するために、国が「地域における医療介護連携の実態把握→課題の検討→課題に応じた施策立案」に至る方法を具体化して市町村に実施を求めるとともに、市町村で取り組みが困難なデータ分析や体制整備、入退院時の連携などについて「都道府県による支援」を充実していく―。

 16日に開催された社会保障審議会の介護保険部会で、こういった方向が確認されました(関連記事はこちらこちら)。

 今回で次期介護保険制度改革に向けた個別項目の議論が二巡したことを受け、遠藤久夫部会長(学習院大学経済学部教授)は厚生労働省に対して「次回会合に叩き台を示してほしい」と指示。介護保険部会では年内の意見取りまとめを目指します。

11月16日に開催された、「第68回 社会保障審議会 介護保険部会」
11月16日に開催された、「第68回 社会保障審議会 介護保険部会」

在宅医療・介護連携、実態把握→課題抽出→対応策立案の過程を国が明確化

 いわゆる団塊の世代(1947-49年生まれの人)がすべて75歳以上の後期高齢者となる2025年に向け、慢性期医療や介護のニーズが飛躍的に高まると予想され、医療・介護連携の重要性がこれまで以上に高くなります。

 医療・介護連携を進める手法の1つとして、市町村の新たな地域支援事業の中に「在宅医療・介護連携推進事業」が位置付けられています。具体的には、地域の医療・介護資源を把握し、連携に向けた課題を抽出。その上で具体的な対策を取っていくというもので、2018年4月までに全市町村で8項目の事業すべてを実施することが求められます。

在宅医療・介護連携推進事業の概要。2018年度から8つの事業すべてを、全市町村で実施しなければならない
在宅医療・介護連携推進事業の概要。2018年度から8つの事業すべてを、全市町村で実施しなければならない

 しかし、厚労省の調査によれば、2016年度時点で8項目すべてを実施している市町村は174自治体(全体の10.0%、15年度に比べて130自治体・7.5ポイント増)にとどまり、98自治体(同5.6%、15年度に比べて250自治体・14.4ポイント減)ではまだ事業を実施していないなど、進捗は見られるものの、必ずしも十分とはいえない状況です。また、8項目それぞれの実施状況を見ると、バラつきが大きなことや、ベースとなる事業(地域の医療・介護資源の把握、課題の抽出と対応策検討)の実施も全自治体の6割強にとどまっています。

 この点について、これまでの介護保険部会では「本来の目的が見えず、一部分の項目を切り出して実施している自治体が少なくない」「前提となる実態把握・課題分析をした上で、対応策を実施するよう市町村に促すひつようがある」との指摘がありました。厚労省老健局老人保健課の鈴木健彦課長は、この指摘を踏まえ「地域の医療介護連携の実態把握→課題の検討→課題に応じた施策立案」に至る方法を国が具体化した上で、市町村に在宅医療・介護連携推進事業の実施を求めていく考えを示しています。いわば、PDCAサイクルを市町村自らが回していけるようにするものです。実態を把握し、課題を抽出せずに「実効性のある対応策」は検討できないからです。

 16日の部会では、この考えを高く評価する声が多くの委員から出されたほか、「市町村の行う在宅医療・介護連携推進事業の成果を、国や都道府県が評価していくべき」との意見も出されました(岡良廣委員:日本商工会議所社会保障常任委員会委員、小林剛委員:全国健康保険協会理事長ら)。この点について鈴木老人保健課長も「取り組みの実施数だけでなく、実際に医療介護連携が必要な場面で連携が推進されているかの評価を行う視点が重要」との考えを示しています。

在宅医療・介護連携の推進に向けて、都道府県による市町村の支援を充実

 在宅医療・介護連携推進事業が十分に進んでいない背景には、「市町村単体では実施が困難」という側面もあるようです。具体的には「ノウハウ不足」や「医師会とのつながりが乏しい」「医師への働きかけが分からない」などといった点が目立ち、特に小規模な市町村ではマンパワー不足も手伝い、十分な取り組みが行えていません。

 そこで鈴木老人保健課長は、次期介護保険制度改革に向けて「都道府県による支援」の充実を図る考えを明確にしています。例えば、▼データの収集分析▼在宅医療に係る体制整備▼広域的な入退院時の連携―など「都道府県が実施すべき支援」を国が明確化するとともに、医師会などとの連携や保健所の活用などを促していくことになります。

 この点について武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)や桝田和平委員(全国老人福祉施設協議会介護保険事業等経営委員会委員長)は、とくに「山間部などの過疎地」に対する支援の充実の必要性を強調しています。

 また土居丈朗委員(慶應義塾大学経済学部教授)は、都道府県による支援の充実に向けて介護保険法の条文を改正することを提案しました。介護保険法では、「情報の提供その他市町村に必要な協力をすることができる」(法第115条の45の10 第3項)、「都道府県介護保険事業支援計画においては、(市町村相互間の連絡調整を行う事業)について定めるよう努めるものとする」(法第118条第3項)とされていますが、これらを「しなければならない」などの義務規定に変えることなどが考えられそうです。

医療・介護連携の先行事例を紹介するなど、「手引き」を早急に改訂へ

 ところで、福井県や滋賀県のように在宅医療・介護連携推進事業が進んでいる地域もあります。

 滋賀県では市町に対して▼日常生活圏域別の在宅療養支援診療所数、訪問看護ステーション数▼市町別の死亡場所別死亡数▼在宅医療需要推計(地域医療構想)―などのデータを提供しているほか、セミナーを通じた集団支援・個別支援を行っています。

 また福井県では全市町に在宅医療・介護連携の強化を図るコーディネーター(保健師・看護師)を配置して、医師会などの関係機関と連携して在宅ケア体制整備を実施しているほか、独自の退院支援ルールを設定し、シームレスな医療・介護サービス提供に努めています。福井県の退院支援ルールでは、病院が「在宅への退院ができそうである」と判断した場合、ケアマネジャーに対して「ケアプラン作成や事業所との調整」などの退院準備に必要な期間を考慮して、退院支援開始の連絡をすることになっており、馬袋秀男委員(民間介護事業推進委員会代表委員)はこの点を高く評価しています。

 厚労省は、こうした事例に関する都道府県・市町村への情報提供も充実していく考えを示しています。この点に関連し、陶山浩三委員(UAゼンセン日本介護クラフトユニオン政策顧問)や齋藤訓子委員(日本看護協会常任理事)、土居委員らは『在宅医療・介護連携推進事業の手引き』を改訂すべきと要望。齋藤委員は「次の人が必要としている情報は何なのか、が分かるように、連携の研修の中に『違う現場で何しているのか』を体感できる授業を組み込むことも改訂の際に行って欲しい」とも求めています。齋藤委員の要望は、医療・介護連携に限らず、急性期から回復期、入院から在宅の際など、連携が必要なあらゆる場面で当てはまるものと言えます。例えば、回復期の病院では、「入院前のその患者がどういった生活を送っていたのか」を考えてリハビリを行いますが、転院元の急性期病院からはそうした情報が十分に提供されていないといいます(関連記事はこちら)。

 この要望について鈴木老人保健課長は「なるべく早く改訂を行う」考えを明確にしています。2018年4月には在宅医療・介護連携推進事業が全市町村で実施されることになっていることを考えると、厚労省で早急に改訂作業が進められることになるでしょう。

 

 このほか在宅医療・介護の連携を進めるため、鈴木老人保健課長は▼都道府県の介護・医療部局の双方が市町村を支援する(2018年度からの介護保険事業支援計画に、在宅医療・介護連携推進事業に対する医療部局との連携を含めた支援内容を盛り込むなど)(関連記事はこちらこちらこちら)▼2018年度の介護報酬・診療報酬改定に向け、ニーズに応じたサービス提供(リハビリなど)、入退院時における入院医療と在宅介護の連携などを検討する―方針も示しています。

  

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