がん治療の専門家やキャンサーナビゲーターの育成・配置を―がん対策推進協議会



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 今後のがん医療提供体制を整備するにあたって、「均てん化」が必要な取組に関しては引き続き体制を維持するが、▼ゲノム医療▼一部の放射線治療▼希少がん、小児がん、難治性がんなど―については一定の等について一定の「集約化」が必要である―。

 26日に開かれたがん対策推進協議会で、下部組織である「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」の議論の整理が報告されました(関連記事はこちらこちら)。

 関連して「がん治療を行う専門医」や「患者に総合的な情報提供を行うキャンサーナビゲーター」の育成・配置が重要であることも確認されています。

10月26日に開催された、「第61回 がん対策推進協議会」
10月26日に開催された、「第61回 がん対策推進協議会」

がん診療提供体制の均てん化を進めながら、高度放射線治療などは集約化を

 協議会では、我が国のがん対策の基礎となる「がん対策推進基本計画」の見直し(第3期計画:2017-21年度)に向けた議論を進めています。基本計画に盛り込む内容のうち、▼がん診療提供体制▼緩和ケア▼がん検診―については下部組織で、より専門的な議論が行われています。

 このうち「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」では、今年(2016年)5月から8月にかけて議論を続け、今般「議論の整理」が取りまとめられ、協議会に報告が行われました。そこでは、今後のがん診療提供体制のあり方について次のような方向性が固められました(関連記事はこちらこちら)。

▼がん診療提供体制:「均てん化」が必要な取組に関しては引き続き体制を維持するが、▽ゲノム医療▽一部の放射線治療▽希少がん・小児がん・難治性がん―などについて一定の「集約化」を行う。またがん以外の併存疾患への適切な対応をとるほか、外来診療・後方支援施設・在宅医療などのあり方も検討していく

▼がん医療に関する相談支援と情報提供:個人情報に留意した希少がんなどの情報提供のあり方や、科学的根拠に基づく情報提供の仕組みを検討していく

▼がん診療連携拠点病院などにおける医療安全:特定機能病院の医療安全管理体制を参考に、要件を設定する

▼がんゲノム医療:がんゲノム医療実現のための検査の質、医療現場の体制構築、人材育成(遺伝カウンセラーなど)、情報の取扱いなどを検討するとともに、データベースを整備する

▼がんの放射線治療:粒子線治療の集約化や都道府県を越えた連携の必要性、高精度放射線治療に関する情報提供を推進する。またRI内用療法へのアクセスや体制作り、緩和的放射線照射の提供を進める

 こうした診療提供体制に関連し、自身ががん患者でもある若尾直子委員(NPO法人がんフォーラム山梨理事長)から「どこの病院に、自分の罹患したがん腫の専門家がいるのかが分からない」という指摘がありました。他の委員からは「情報提供の推進」とともに、「専門家の養成」の重要性が指摘されました。とくに北川雄光委員(慶應義塾大学医学部外科学教授(一般・消化器外科))や検討会座長の北島政樹座長(国際医療福祉大学副理事長・名誉学長)は「キャンサーナビゲーター」の養成・配置の重要性を強調しています。

 我が国ではキャンサーナビゲーターの定義はありませんが、がん患者に寄り添い、医療的・精神的なサポートはもちろん、経済的な支援を行う制度のあり方などを説明・紹介する医療・福祉の専門家を指します。米国では、多くのがん専門病院に専門研修を受けたキャンサーナビゲーターが配置されており、患者のサポートを行っています。メディ・ウォッチを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン代表取締役会長で会長米国グローバルヘルス財団理事長のアキよしかわは、昨年(2015年)、米国屈指の病院であるクィーンズメディカルセンター(ハワイ州)でキャンサーナビゲーターの資格を取得しました(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

 がん診療連携拠点病院では、患者に情報提供を行う「相談支援センター」の設置が義務付けられましたが、必ずしも十分には機能していないようです。米国のようなキャンサーナビゲーター配置が、我が国でも進んでいくことが期待されます。

 

 なお、中川恵一委員(東京大学医学部附属病院放射線科准教授)は、RI内用治療(体内に取り込んだ放射性同位元素によりがん細胞を殺傷する治療法)や緩和的放射線照射が我が国で進まない理由の1つに「低い診療報酬」を上げています。中川委員は「RI内用治療が、DPC病棟で実施された場合、治療に用いる放射性同位元素は薬剤として包括されてしまう。DPCでは他の放射線治療が出来高算定である。診療報酬上の対応を検討してほしい」旨の要望も行いました(関連記事はこちら)。

標準治療の実施状況に病院間でバラつき、ガイドラインのさらなる周知を

 がん診療提供体制については前述のように「均てん化」を進めることが今後も求められます。しかし、均てん化のポイントの1つである「標準的な治療」の実施にはバラつきがあることが藤原俊義参考人(岡山大学大学院消化器外科学教授)から報告されました。

 例えば、乳がん治療のうち「腋窩リンパ節転移例における乳房切除術後放射線治療」(推奨グレードA)は、年間200症例以上の病院では69.5%実施されていますが、年間50症例未満の病院では37.7%しか実施されていません。また拠点病院か否か、日本乳がん学会の認定を受けているか否かでも、バラつきがあります。藤原参考人は「ガイドラインのさらなる周知が必要」と訴えています(関連記事はこちらこちら)。

がん対策、多彩な目標値を設定し総合的に評価すべき

 26日の協議会では、「がん対策推進基本計画」に盛り込む『目標』についても議題となりました。現在の第2期計画(2012-16年度)では、「がんの年齢調整死亡率(75歳未満)の20%減少」などいった目標を定めており、第3期計画でどのような目標が設定されるのかも注目されます。

 この点に関連して若尾文彦参考人(国立がん研究センターがん対策情報センター長)は、「年齢調整死亡率減少」などの全体目標だけでなく、▼部位別死亡率▼罹患率―など多彩な目標値を設定しがん対策を総合的に評価することの重要性や、目標達成状況を「何で測るか」といった点を十分に考慮することの必要性、さらに目標を早期に達成したイギリスの施策を学ぶことの必要などを強調しています。

 

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