介護療養に生活機能をプラスアルファした施設類型を、新たな介護保険施設の1つに―社保審・療養病床特別部会



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 介護療養病床や4対1看護配置などを満たさない医療療養の新たな移行先について、「医療内包型」施設を介護保険施設の新類型として創設し、「医療外付け型」施設を、医療機関と介護保険の特定施設などとの併設を認める―。

 26日に開かれた社会保障審議会の「療養病床の在り方等に関する特別部会」で、厚生労働省はこういった素案(叩き台)を提示しました。

 内包型施設は、入所者像に応じて▼重篤な身体疾患を有する者・身体合併症を有する認知症高齢者などが入所する施設(I型)▼容体が比較的安定している者が入所する施設(II型)―に分けられ、「介護老人保健施設」「介護療養型老人保健施設」「新たな医療内包型施設のII」「新たな医療内包型施設のI」という具合に、医療の必要度に応じた分かりやすい施設体系・区分となることが想定されます。

10月26日に開催された、「第4回 社会保障審議会 療養病床の在り方等に関する特別部会」
10月26日に開催された、「第4回 社会保障審議会 療養病床の在り方等に関する特別部会」

医療内包型の新施設、入所者の状態に応じて2類型を想定

 まず医療内包型施設について見てみましょう。「療養病床の在り方等に関する検討会」で打ち出された、医療内包型の新類型(案1-1、案1-2)について、骨格をより明確にしたものです。

【案1-1】【案1-2】【案2】の機能を図示したもの。全く新たな施設類型である【案1-1】【案1-2】については、【案2】などとの組み合わせ(居住スペース)になる形態が多いのではないかと厚労省は見込んでいる
【案1-1】【案1-2】【案2】の機能を図示したもの。全く新たな施設類型である【案1-1】【案1-2】については、【案2】などとの組み合わせ(居住スペース)になる形態が多いのではないかと厚労省は見込んでいる

 施設の基本的性格は「要介護高齢者の長期療養・生活施設」とされ、介護保険施設の1類型となる見込みです。現在、介護保険法では第5章第5節「介護保険施設」として、第1款「介護老人福祉施設」(特養ホーム)と第2款「介護老人保健施設」が規定されており、第3款として新類型が位置づけられることになりそうです。

 もっとも医療を提供するため、医療法の第1条の2第2項に規定される医療提供施設の中に、新類型も位置づけられることになるでしょう。厚労省大臣官房の濵谷浩樹審議官(医療介護連携担当)(医政局、老健局併任)は、「現行の介護療養に生活機能をプラスアルファした施設」と大きなイメージを説明しています。

 医療内包型の施設は、入所者の状態に応じて2つに区分されます。もちろん、それぞれの利用者像は「主に入所する者」をイメージしたもので、例えば【I型】施設から軽度者が退所しなければならないということにはなりません。

【I型】重篤な身体疾患を有する者・身体合併症を有する認知症高齢者など(現在の療養機能強化型A、Bに相当する者)が入所する施設

【II型】I型と比べて、容体が比較的安定した者が入所する施設

 それぞれの入所者像に照らして、厚労省は【I型】では介護療養病床相当(医師48対1・3人以上、看護6対1、介護6対1)、【II型】では老健施設相当(医師100対1・1人以上、看護・介護3対1・うち看護は7分の2以上)という施設基準を満たすことが必要ではないかと考えています。もっとも、これらは最低基準であり、今後、介護給付費分科会などでより厳しい人員・設備基準(例えば療養機能強化型Aなどを勘案)が設定される見込みです。

 なお厚労省老健局老人保健課の鈴木健彦課長は、「介護療養型老健施設(転換型老健)は、夜間の人員配置基準を既存の老健施設よりも手厚く設定した。今回の【II型】は、療養機能強化型A、Bまではいかないものの介護療養型老健よりもさらに医療の必要性が高い方の入所を想定している」と説明しています。ここから、「介護老人保健施設」「介護療養型老人保健施設(転換型老健)」「新たな医療内包型施設II型」「新たな医療内包型施設I型」という具合に、入所者の医療の必要性に応じた、分かりやすい施設体系が整備されることが期待されます。

 また入所期間の長期化を踏まえて生活機能を重視し、【I型】【II型】の双方とも老健施設相当の「1床当たり8.0平米」といった面積基準が設定されることになりそうです。ただし、現行施設からの円滑な転換を促すため、大規模修繕までは「6.4平米の多床室」も認められる見込みです。

 さらに介護保険施設の1類型であることから、低所得者対策である補足給付(食費、居住費の一部が保険給付される)の対象となります。なお同一施設の中に【I型】と【II型】の併存を認めるかについては、まだ議論されていませんが、現在の診療報酬や介護報酬の設定を見ると、どちらかを選択することになりそうです。

介護療養に生活機能をプラスアルファした新たな介護保険施設を創設し、利用者像によって2つに区分する考えが示された
介護療養に生活機能をプラスアルファした新たな介護保険施設を創設し、利用者像によって2つに区分する考えが示された

医療外付け型施設、医療機関と特定施設などとの併設を想定

 次に「医療外付け型」施設を見てみます。これは「療養病床の在り方等に関する検討会」で示された外付け型の案2に相当し、「医療の必要性は多様だが、容体が比較的安定した者」が入所対象と想定されています。

【案1-1】【案1-2】【案2】の機能を図示したもの。全く新たな施設類型である【案1-1】【案1-2】については、【案2】などとの組み合わせ(居住スペース)になる形態が多いのではないかと厚労省は見込んでいる
【案1-1】【案1-2】【案2】の機能を図示したもの。全く新たな施設類型である【案1-1】【案1-2】については、【案2】などとの組み合わせ(居住スペース)になる形態が多いのではないかと厚労省は見込んでいる

 こちらは新しい施設類型を正面から認めるものではなく、「医療機関」と「居住スペース」の同一建物内での併設を認めるという形になりそうです。例えば看護配置4対1を満たせない医療療養が、一部病棟を居住スペースにし、残りの病棟に人員を集約して看護4対1を満たせるようにする、といったイメージです。

 このうち「居住スペース」について厚労省保険局医療介護連携政策課の黒田秀郎課長は「介護療養からの転換となれば、入所者は要介護度4・5などの重度者である。そうした方にふさわしい居住スペースが必要である」とし、特定施設入居者生活介護の指定を受ける有料老人ホームなどを想定していることを明らかにしています。

 居住スペースについてはさまざまな形態が考えられますが、有料老人ホームなどの介護保険施設以外の類型を併設した場合には、低所得者に対する補足給付の対象とはなりません。また「個室」であることが必要となっていますが、委員から「多床室」を求める声も少なくないため、今後さらに議論されることになります。

医療外付け型では、同一建物内でも医療機関と居住スペースの併設を認めることになる
医療外付け型では、同一建物内でも医療機関と居住スペースの併設を認めることになる

新施設などへの移行期間をどの程度に設定すべきか

 介護療養などの開設者は、自院の入所者像(現在および将来)を十分に把握した上で、これらの施設類型や医療療養・介護療養型老健などを含めて、転換先を選択することになります。

 介護療養などの設置期限は2018年3月までですが、報酬水準や詳細な施設基準は直前の2017年2月(介護報酬改定)まで固まらないため、一定の経過措置が設けられることになります。黒田医療介護連携政策課長は「第7期介護保険事業計画(2018、19、20年度)の3年間を活用して移行を進めてはどうか」と考えていますが、鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)は、「円滑な移行を進めるためには、介護療養などの開設者が自主的に転換することが重要である。そのため、3年後に再度検討し、さらに3年間、都合6年間の経過措置が必要である」と強調しています。

介護療養などから新類型に転換する場合でも、一定の転換のための経過期間が必要となり、厚労省は介護保険事業計画期間となる「3年」を一つの目安にしていると考えられる
介護療養などから新類型に転換する場合でも、一定の転換のための経過期間が必要となり、厚労省は介護保険事業計画期間となる「3年」を一つの目安にしていると考えられる

 なお、看護配置4対1を満たさない医療療養についても、2018年3月で設置根拠が切れるため、こうした選択肢を含めた検討が必要となります。ただし、看護配置4対1を満たさない医療療養については、「診療報酬の25対1療養病棟入院基本料をどうするのか」といったテーマとも密接に関連する問題があり、特別部会で議論を行うものの、最終決定は中央社会医療協議会で行われることになります。

25対1医療療養の最終結論は、中央社会医療保険協議会で得ることになる
25対1医療療養の最終結論は、中央社会医療保険協議会で得ることになる

一般病床からの転換や新設を認めるべきか、将来に向けて避けられないテーマ

 26日の特別部会では、こうした厚労省案に明確な反対は出されていません。もっとも経過措置などについて注文がついており、さらに具体的な姿を年末にかけて描いていくことになりそうです。

 委員から出された注文としては、「実際の転換は経過措置期間中に行うことでよいが、転換への意思表明をより早い段階で求めてはどうか」(田中滋委員:慶應義塾大学名誉教授)、「介護療養からの転換を優先した上で、一般病床などからの転換も検討すべき」(加納繁照委員:日本医療法人協会会長)などが目立ちます。

 とくに後者の「一般病床などからの転換」については、今後、必ず検討しなければいけないテーマとなります。濵谷審議官は「新類型のうち医療内包型は法律(介護保険法)の本則に位置づけたい」との考えを示しており、これは「恒久的な施設類型」とすることを意味します。その場合、一般病床などからの転換や新設を認めないことは、新規参入を阻害することになってしまうため、このテーマは避けて通れません。この点について岩村正彦委員(東京大学大学院法学政治学研究科教授)は「介護療養からの転換が優先となるのは理解できるが、新設などを認めない期間は最大で3年程度であろう」と見通しています。

 なお介護保険制度を運営する自治体からは「人員配置を柔軟に設定すべき」といった指摘なども出されています。新たな施設類型の創設、さらに一般病床からの転換や新設を認めることは介護保険財政にも直接影響してきます。地方では人口減少も目に見える形で起こっており、将来を見据えた施設整備が求められます。

 

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