一般病床や、療養病床の医療区分2・3患者でも居住費負担を求めるべきか―医療保険部会



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 療養病床に入院する医療区分1の患者では、医療費と食費のほかに「光熱水費」についても自己負担があるが、この自己負担額を介護保険制度に合わせて引き上げるべきか、また医療区分2、3の患者や一般病床などの入院患者にも新たな自己負担を求めるべきか―。

 12日に開かれた社会保障審議会の医療保険部会では、こういったテーマについて議論を行いました(関連記事はこちらこちら)。

 「公平性」や「整合性」が、医療保険改革や介護保険改革において非常に重要なキーワードとなっています。

10月12日に開催された、「第98回 社会保障審議会 医療保険部会」
10月12日に開催された、「第98回 社会保障審議会 医療保険部会」

現在、まちまちな居住費負担、公平性・整合性をどう図るべきか

 医療機関の入院患者や介護保険施設の入所者では、医療費や介護費にかかる一部自己負担(年齢や所得に応じて1-3割)を支払っています。応益負担(保険の利用者が医療費などの一部を負担する)の考えに立ったものです。

 また医療機関に入院する患者では、食事にかかる一部自己負担もあります(2015年の医療保険改革によって、一般所得者について従前の1食260円→2016年度から1食360円[現在]→2018年度から1食460円へと、段階的に引き上げ)。しかし、介護保険では原則として食費は完全に自己負担ですが、低所得者では「補足給付」という補填措置があります。この差には、「入院患者の食事は治療の一環であり保険給付の対象とする」という考えがあります。

 さらに、居住費(光熱水費)については、次のように制度や病床の種類によってまちまちな状況です。

(1)一般病床、精神病床などの入院患者、療養病床に入院する65歳未満の患者:自己負担なし

(2)療養病床に入院する、65歳以上の医療区分1の患者:1日あたり320円の自己負担あり

(3)療養病床に入院する、65歳以上の医療区分2または3の患者:自己負担なし

(4)介護保険施設に入所する一般所得者:居住費(光熱水費)は完全に自己負担

(5)介護保険施設に入所する低所得者:居住費(光熱水費)は自己負担だが、補足給付で補填されている(生活保護を受けていない市町村民税非課税世帯では370円)

図のピンク色の部分が患者・利用者の自己負担、ブルーの部分が保険給付。保険の種別、病床の種別、年齢によって食費や居住費の自己負担が異なり複雑になっていることが分かる
図のピンク色の部分が患者・利用者の自己負担、ブルーの部分が保険給付。保険の種別、病床の種別、年齢によって食費や居住費の自己負担が異なり複雑になっていることが分かる

 こうした複雑な構図については、「介護保険施設は『住まい』であるため居住費を求めており、療養病床に入院する比較的軽度(後述するように争いあり)の医療区分1の患者にも同様に居住費を求める」、一方で「医療区分2、3の患者は入院の必要性が高いため、居住費は求めない」「一般病床などは『住まい』ではないため、居住費は求めない」と説明されています。

 12日の医療保険部会では、こうした「居住費自己負担の差異」を解消していくべきか、というテーマが議論になりました。

療養病床の医療区分Iの居住費負担、320円から370円に引き上げへ

 まず、(2)の「療養病床の医療区分1(65歳以上)における居住費負担320円」を、(5)の「介護保険施設における居住費負担370円」に合わせるべきかという点が議論になりました。介護保険施設の居住費負担は従前320円でしたが、総務省の家計調査をベースに、光熱水費の高騰を考慮して、2015年4月から370円に引き上げられました。在宅利用者との公平性を図ったものです。

 この点、白川修二委員(健康保険組合連合会副会長)や藤井隆太委員(日本商工会議所社会保障専門委員会委員)ら、多くの委員から「介護保険との整合性を図るべき」との意見が出されています。

医療区分2・3の患者への居住費負担には賛否両論

 次に、(2)の「療養病床の居住費負担」を、(3)の「医療区分2、3の患者」にも求めるべきかという議論があります。前述のように、医療区分1では「比較的軽度で、入院の必要性が低い」との指摘を受け、介護保険との整合性を図る意味で、居住費負担が導入されています。

医療機関に居住費負担を導入する際には、(1)療養病床(2)65歳以上(3)医療区分1―という限定が設けられた
医療機関に居住費負担を導入する際には、(1)療養病床(2)65歳以上(3)医療区分1―という限定が設けられた

 この点について、白川委員や藤井委員は「医療区分は医療の必要性を示すものと言えるが、『医療の必要性』と『光熱水費の負担』とは関係がない」として、医療区分2、3の患者にも居住費負担を求めるべきと主張。

 対して松原謙二委員(日本医師会副会長)は、「そもそも医療区分1に対する居住費負担も財政的な観点から導入されたもので、好ましくない。医療区分2、3へ拡大するという考えは、入院医療への理解が不足しているのではないか」と反対しました。新谷信幸委員(日本労働組合総連合会副事務局長)も、「入院療養の必要性の高い医療区分2、3の患者には居住費を求めるべきではない」と述べています。

 また武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)は、「医療区分1は、医療区分2、3に該当しない『その他』という区分であり、末期のがん患者も医療区分1に該当してしまう。医療区分1には軽度の患者も重篤な患者もいる」ことを説明し、「医療区分1=軽度者」という構図は誤りであることを強調。さらに、医療法上の看護配置4対1などを満たさない医療療養病床について、新たな施設類型などへの移行が議論されている点も踏まえて、「2018年に療養病床の将来の姿が見えた頃に、もう一度検討するべきではないか」と提案しています。

医療区分1は、医療区分2(筋ジストロフィーなど)と医療区分3(スモンなど)以外と定義されており、さまざまな患者が含まれている
医療区分1は、医療区分2(筋ジストロフィーなど)と医療区分3(スモンなど)以外と定義されており、さまざまな患者が含まれている

65歳未満の療養病床入院患者への居住費負担導入も賛否両論

 ところで、(2)の居住費負担が生じるのは医療区分1であっても、「65歳以上」に限定されています。これは「65歳以上の患者では、年金で居住費負担がカバーされる」点を踏まえたものとされています(やはり介護保険との整合性)。

 次期医療保険改革に向けて、この「65歳以上」という限定を維持するかどうか(逆に言えば65歳未満の療養病床入院患者にも居住費負担を求めるか)も議論されました。

 この点、費用負担者である白川委員や小林剛委員(全国健康保険協会理事長)は、「65歳未満の長期入院患者もさまざまであり、単純に年齢で限定するのはいかがなものか。年齢区分を廃止して、療養病床の入院患者には居住費負担を求めるべき」と主張。

 しかし、新谷委員や松原委員は「制度の趣旨(年金によるカバー)に則って、65歳以上の限定を維持する必要がある」と反論しています。

一般病床でも長期の入院患者がおり、居住費負担導入を検討

 さらに、(1)の一般病床などでは居住費負担が設定されていませんが、これは「一般病床などは『住まい』の機能を持たないため」と説明されています。しかし、一般病床などにも長期入院患者がいるため、「居住費を求めるべきではないか」との指摘もあります。

 この点について、白川委員は「一般病床に入院する急性期の患者に居住費負担を求めることは疑問だが、一定期間以上の長期入院、例えば特定除外制度の対象となる90日超を患者などには居住費負担を求めてもよいのではないか。精神・結核病床では、療養病床以上の長期入院が多く、居住費負担を求めるべき」と主張しています。

 一方、新谷委員は「長期入院の是正が指摘されるが、在宅への移行や、慢性期病院への転院などを進めることで解決すべきテーマであり、居住費負担は別に考えるべきである」とし、負担導入には明確に反対しています。

 

 このように、いずれの論点についても「公平性」や「医療と介護の整合性」がポイントとなっていますが、賛否両論があります。この点について菅原琢磨委員(法政大学経済学部教授)は「公平・整合性を図る方向には賛成だが、医療と介護の違いは踏まえなければいけない。介護に比べて、医療では予見可能性・自己決定性がはるかに低く、丁寧な議論が必要である」とコメントしました。

介護保険と同様に、低所得者の判断で「金融資産」などを考慮すべきか

 またこの日は、「金融資産を考慮した負担のあり方」も議題となりました。

 前述のように、介護保険制度では、介護保険施設の食費と居住費が「原則、完全に自己負担」とされています。在宅の要介護者との整合性(在宅生活では食事も家賃も完全に自己負担である)を図るものです。

 しかし、介護保険施設の入所者には低所得の人も少なくなく、「食費が払えないので、入所できない」という事態を避けるために、「福祉的」「経過的」なものとして補足給付という補填措置が行われています。2014年の介護保険制度改正では、低所得者の要件として新たに▼金融資産の考慮▼配偶者資産の考慮▼非課税年金の考慮―という点も加えられました。より「公平性」を確保することが狙いです(関連記事はこちら)。

補足給付のがいよう
補足給付のがいよう
2014年の介護保険制度改革で、補足給付の対象となる低所得者を判断する際に、金融資産などを考慮し、より公平性を高めることとされたが、「自己申告」に頼っているのが現状である
2014年の介護保険制度改革で、補足給付の対象となる低所得者を判断する際に、金融資産などを考慮し、より公平性を高めることとされたが、「自己申告」に頼っているのが現状である

 この「金融資産の考慮」という考え方を、医療保険にも導入すべきかという論点が浮上しています。具体的には、介護保険の補足給付に対応すると言える「医療保険の入院時食事療養費・入院時生活療養費」の低所得者を判断する際に、金融資産を考慮することなどが考えられます。

入院時食事療養費などは、医療区分やベッドの種別のほか、「所得」によって標準額に差が設けられている
入院時食事療養費などは、医療区分やベッドの種別のほか、「所得」によって標準額に差が設けられている

 ただし、この論点についてはほぼすべての委員が「金融資産の把握は適切に行えるわけではなく(介護保険では自己申告に頼っている)、時期尚早である」と反対しています。次期医療保険改革での導入は難しそうです。

 

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