2018年度からの医療費適正化計画、入院医療費では病床機能分化などを見込んではどうか―医療保険部会



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 2018年度から都道府県は新たな「医療費適正化基本計画」を定めるが、そこでは入院医療費について「病床機能分化・連携の推進」の成果を、外来医療費については「後発医薬品使用率80%」「特定健診実施率70%」「特定保健指導実施率45%」「地域差縮減」などの効果を踏まえて設定する―。

 厚生労働省は、9月29日に開催した社会保障審議会の医療保険部会で、このようなイメージを報告しました(関連記事はこちらこちら)。

 また、世代内・世代間の公平性を踏まえた高額療養費制度の見直しについても議論しましたが、賛否両論が出されています。

在宅医療への移行などは、入院医療費には見込まず

 高齢化の進展などに伴って医療費が膨張を続けており、2015年度の概算医療費(国民医療費の98%に相当)は41兆5000億円にのぼっています。これに制度改革だけで対応していくことは難しく、高齢者医療確保法(高齢者の医療の確保に関する法律)では、都道府県に対して6年を一期とする医療費適正化計画(従前は5年を一期)を定めるよう指示しています(法第9条)。また、国は都道府県が計画を作成するにあたっての拠り所となる基本方針(医療費適正化基本方針)を定める必要があります(法第8条)。

医療費適正化計画の概要
医療費適正化計画の概要

 2018年度から第3期の医療費適正化計画を都道府県が定めることになっているため、国は今年(2016年)3月に基本方針を告示しています。

 さらに9月29日の医療保険部会では、厚労省から「医療費見込みの推計式」案が提示されました。各都道府県の医療費適正化計画においては、この式にそって医療費を推計。その上で、実際の医療費との格差を縮小するための方策などを具体的に打ち立てることになります。

 まず入院医療費については、「病床機能分化・連携の推進」の成果を踏まえて推計することになります。具体的には、2023年度(平成35年度)における▼高度急性期▼急性期▼回復期▼慢性期▼在宅医療等―の区分ごとの患者数に、「推計1人当たり医療費」を乗じて推計します。

 また地域医療構想策定ガイドラインでは「医療資源投入量の少ない一般病床の入院患者や、医療区分1の療養病床入院患者の7割を在宅医療などに移行する」方針が明確にされていますが(関連記事はこちらこちら)、厚労省は移行する患者などの状態増が不明であることなどから「医療費の推計として盛り込んでいない」としています。

 なお、都道府県が独自に「在宅医療などへの移行に伴う医療費の変化」を推計することが可能ですが、福田富一委員(全国知事会社会保障常任委員会委員長・栃木県知事)の代理として出席した山本圭子参考人(栃木県保健福祉部保健医療監)は「都道府県に推計を求めるのであれば、国の責任で推計手法を提示すべき」と求めています。

入院医療費の推計に当たっては、病床機能分化・連携の推進を見込む、ただし「在宅医療への移行」については医療費において見込まない(都道府県が独自に見込むことは可能)
入院医療費の推計に当たっては、病床機能分化・連携の推進を見込む、ただし「在宅医療への移行」については医療費において見込まない(都道府県が独自に見込むことは可能)

外来医療費では、糖尿病重症化予防、後発医薬品使用促進など見込む

 一方、外来医療費については(1)後発医薬品の使用割合を80%と見込む(骨太方針2015)(2)特定健診実施率を70%、特定保健指導実施率を45%と見込む(3)1人当たり外来医療費の地域差縮減の効果を見込む―という方針が示されました。

 このうち(3)の地域差縮減では、具体的には▼糖尿病に関する重症化予防(関連記事はこちら)▼かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師・薬局の役割の発揮(関連記事はこちら)▼病院と診療所連携推進による重複投薬、複数種類医薬品投与の適正化(関連記事はこちら)―を見込みます。

 例えば糖尿病の重症化予防により「糖尿病患者の医療費が平均を上回り地域で、格差を半減させる」ことや、「3医療機関以上で重複投薬されている患者数」と「15剤以上の多剤投与を受けている65歳以上の高齢者数」を半減させることなどで、外来医療費の地域差縮減を狙う考えです。

外来医療費の推計に当たっては、後発品使用割合を80%と見込む
外来医療費の推計に当たっては、後発品使用割合を80%と見込む

外来医療費の推計に当たっては、特定健診受診率を70%、特定保健指導の実施率を45%と見込む
外来医療費の推計に当たっては、特定健診受診率を70%、特定保健指導の実施率を45%と見込む

外来医療費の推計に当たっては、糖尿病重症化予防やかかりつけ医機能の推進などによる重複受診の抑制などを見込む
外来医療費の推計に当たっては、糖尿病重症化予防やかかりつけ医機能の推進などによる重複受診の抑制などを見込む

70歳以上の高額療養費、70歳未満の仕組みと合わせるべきか

 9月30日の医療保険部会では、高額療養費制度の上限額設定や、保険料軽減の特例措置などの見直しも議題となりました。

 高額療養費制度は、患者負担(自己負担)が過重にならないよう、暦月1か月当たりの患者負担が一定額を超過した場合、超過分が保険から給付されるという仕組みです。ただし、現在、「70歳未満」と「70歳以上」で負担上限額が異なるなどの差異があり、世代内・世代間の公平性を確保する必要があるのではないかとの指摘が出ています。そこで厚労省は次の点について、委員間でも議論を要請しました。

年齢階級別に見た、患者負担(窓口負担)および高額療養費の概要
年齢階級別に見た、患者負担(窓口負担)および高額療養費の概要

(a)70歳以上の現役並み所得者の負担のあり方

(b)70歳以上の一般区分の負担のあり方

(c)70歳以上の低所得者の負担のあり方

(d)70歳以上の外来上限特例

(e)70歳以上の「現役並み所得」のあり方

 70歳未満では、年収370万円以上の場合、所得に応じて3段階に自己負担上限額が設定されていますが、70歳以上の高齢者では現役並み所得者」として一律に上限額が設定されています。また「現役並み所得」の考え方について、介護保険では「所得上位20%以上(合計所得金額が160万円以上)」と設定されており、医療保険とは異なっています。

 また70歳未満では、住民税非課税世帯について一律の上限額が設定されていますが、70歳以上ではより細かい上限額設定されているほか、外来に着目した上限額も設定されています。

 こうした点について、「世代間・世代内の負担の公平性を図るために、現役世代の仕組みと合わせていくべき」とする意見(白川修二委員:健康保険組合連合会副会長、小林剛委員:全国健康保険協会理事長ら)がある一方で、「現状どおりとすべき」との意見(松原謙二委員:日本医師会副会長ら)も出ています。

 また、見直しの方向には賛同するが、「経済力の差で医療へのアクセスが阻害されてはいけない」として、上限額を若干低く設定するなどの十分な配慮を求める意見も出ています(伊藤彰久参考人:日本労働組合総連合会総合政策局生活福祉局長ら)。

 さらに、国保サイドからは「施行までにシステム改修や周知などの十分な準備期間を設ける必要がある」との要望も出ています(原勝則委員:国民健康保険中央会理事長ら)。

 

 なお、75歳以上の後期高齢者では、所得が少ないことや、74歳から急激な負担増を避ける(例えば74歳まで子どもの被扶養者であった場合には、75歳から保険料を負担しなければならない)ために、保険料軽減特例が設けられています。

後期高齢者医療制度では、さまざまな保険料軽減特例が認められている
後期高齢者医療制度では、さまざまな保険料軽減特例が認められている

 この仕組みについても「世代間・世代内の公平性を考え、激変緩和措置を設けた上で廃止する(法律本則に戻す)べき」との意見(藤井隆太委員:日本商工会議所社会保障専門委員会委員ら)と、「軽減措置は継続すべき」との意見(松原委員ら)とが対立しています。

 なお、軽減措置廃止を求める委員の中には「激変緩和措置は設けるべきだが、2017年4月移行に後期高齢者となる被保険者については軽減措置を適用すべきでない」との意見も出ています。この点について、岩村正彦部会長代理(東京大学大学院法学政治学研究科教授)は、「負担増とも言える見直しであり、仮に軽減措置を廃止するとしても周知をきちんとしなければ混乱が生じる」として、2017年4月移行の新規被保険者からの実施には難色を示しています。

 

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