地域医療構想の調整会議、地域で中核となる病院の機能の明確化から始めてはどうか―地域医療構想ワーキング(2)



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 地域医療構想を策定した後、地域の医療提供体制の機能分化・連携などを進めていくための議論を地域医療構想調整会議(以下、調整会議)で進めていくが、その際、まず「医療機能の役割分担」の明確化を行い、次いで「機能分化・連携に向けた方策」の検討に入り、さらに「地域住民への啓発」に関する議論を行ってはどうか―。

 厚生労働省はこうした調整会議の進め方に関する一例を、31日の「地域医療構想に関するワーキンググループ」(「医療計画等の見直しに関する検討会」の下部組織、以下、ワーキング)で紹介しました。(関連記事はこちら

 都道府県などからの「調整会議をどのように進めればよいのか」といった問い合わせに答えるための一例ですが、構成員からは「表現を見直すべきである」という意見が相次いでいます。

8月31日に開催された、「第2回  地域医療構想に関するワーキンググループ」
8月31日に開催された、「第2回 地域医療構想に関するワーキンググループ」

「医療機能の役割分担の明確化」をした後、具体的な機能分化・連携を検討してはどうか

 地域医療構想策定は策定がゴールではなく、2025年に向けてあるべき医療提供体制を構築することが最重要テーマとなります。そのため、構想策定後に幅広い関係者(診療に関する学識経験者の団体、その他の医療関係者、医療保険者など)で構成される調整会議を開き、構想実現に向けた議論を行っていくことが重要です。

 東京都や大阪府、青森県などすでに地域医療構想の策定を終えた都道府県がある中で、自治体からは「調整会議をどのように進めればよいのか」という問い合わせが厚労省に寄せられていると言います。このため、厚労省は31日のワーキングに「調整会議の進め方」に関する一例を提示しました。今年(2016年)3月にも、厚労省は調整会議の具体的な進め方を例示しており、さらに具体化したものと言えます。

 そこでは、調整会議の役割として(1)医療機能の役割分担(2)病床機能分化・連携に向けた方策の検討(3)地域住民への啓発―の3点をあげ、それぞれについて議論の内容や進め方を具体的に示しました。

 まず(1)の「医療機能の役割分担」を明確化することが重要です。この点について厚労省は、(a)公的医療機関などの役割の明確化(b)(a)以外の医療機関の役割の明確化(c)新規参入や増床を行う医療機関への対応(d)方向性を共有した上での機能分化・連携の推進―という進め方のイメージを示しました。

 (a)は「公立病院では、『新公立病院改革ガイドライン』に沿って各病院が2015・16年度に改革プランを策定するため、機能が明確になる」こと、「日赤病院や済生会病院などの公的病院は比較的大規模であり、地域で中心的な役割を果たす(地域の中核となる)ケースが多い」ことを踏まえて、まず「公的医療機関などの役割を優先的に明確化してはどうか」と提案したものです。

 しかし、「公的医療機関を優先」という表現について多くの構成員からは批判が相次ぎました。中川俊男構成員(日本医師会副会長)は「構想区域の中心が公的病院であるという点に納得できない」とコメント。また相澤孝夫構成員(日本病院会副会長)は「公的医療機関が民間病院の経営を圧迫するケースもある。公的・民間の双方が強調して地域医療提供体制を構築していくことが重要である。病院を設立母体別に考える手法は時代遅れではないか」と指摘しました。

 一方、今村知明構成員(奈良県立医科大学医学部教授)は、「医療崩壊が叫ばれ、これを再生するために公的病院は資源投入して急性期に特化するなどの体制整備を行ってきた。ここに来て『慢性期や回復期機能に移ってくれ』となると困ってしまう」と述べ、「公的医療機関を優先」という表現について、「公的医療機関について急性期から回復期・慢性期機能への移管を優先的に進める」と受け取られ兼ねないとの考えを述べています。

 この点、厚労省は前述のように「公立病院で先んじて機能が明確になる」「大規模な公的病院が地域医療の中核となっているケースがある(地域全体の機能を考える際には、まず核を定めるほうが進めやすい)」ことを勘案した提案であり、さらに「あくまで一例である」ことを説明しましたが、構成員は「自治体の担当者は、文面どおりに受け取り『公的病院中心になる』可能性が高い」として、表現の修正を求めています。

機能分化を進める際には、知事の権限行使も視野に入れるべき

 (1)の(a)は、前述のとおり表現は修正されますが、「地域の中核となる医療機関の機能を明確にする」という点が重要です。「幹や骨格を固める」というイメージと言えそうです。

 その上で、(b)の「他の医療機関の機能の明確化」を行います。そこでは、▽比較的規模の小さな医療機関と中核病院との連携を▽中核病院が担わない医療機能(例えば重症心身障害児への医療など)▽近い将来、機能転換を考えている医療機関の方向性▽地域住民の希望―などを踏まえて、地域の医療機関がそれぞれどのような役割を担うのかを明確にし、それを関係者間で共有することになります。

 さらに、(c)の新規参入・増床医療機関に対しては、「今後必要となる医療機能を担ってほしい」と要請していくことが必要です。厚労省は、要請に当たって、「不足している機能を担うことを条件に新規参入や増床を認める」という知事の権限(医療法第7条第5項)を行使することも視野に入れるようアドバイスしています。

 このように機能を明確化した上で機能分化・連携を進めていきますが、その際には「進捗状況を毎年確認(病床機能報告)し、方向性と異なる医療機関に対しては『過剰な機能に対する転換について、公的医療機関に対しては中止を命令、民間医療機関に対しては中止を要請』する知事の権限(医療法第30条の15)を行使することも視野に入れる」ことを厚労省は求めています。

地域医療構想を実現するために、都道府県知事には一定の権限が付与されており、厚労省はこれらを視野に入れるようアドバイスしている
地域医療構想を実現するために、都道府県知事には一定の権限が付与されており、厚労省はこれらを視野に入れるようアドバイスしている
都道府県知事が権限を行使する場合には、事前に「勧告」を行うなど、慎重に判断することも重要である
都道府県知事が権限を行使する場合には、事前に「勧告」を行うなど、慎重に判断することも重要である

病床機能報告の時期を勘案して、調整会議を定期的に開催することが必要

 (2)の機能分化・連携手法について厚労省は、▽整備すべき医療機器やマンパワー、地域連携パスに関わる関係者の役割などを明確化する▽機器の共同利用や連携によるマンパワーの補填などを検討する▽地域医療介護総合確保基金による財政支援―などを検討することが重要と指摘します。

 また(3)の住民への啓発については、▽調整会議の議事内容▽かかりつけ医を持つことなど、外来受診の方法▽専門的で、構想区域を超えて提供される医療の内容▽急性期から回復期、在宅復帰など各医療機関の役割分担―などを情報提供することを提案しています。

 このほか、▽調整会議は、病床機能報告の時期などを踏まえて定期的に開催する▽新規参入医療機関や方向性の異なる医療機関が出現した場合には、都度開催する▽構想区域を超えた連携が必要な事項については、合同会議などを開く―などの留意点も厚労省は示しました。

 

 既に述べたように、こうした流れなどは、あくまで「一例」であり、地域の実情に応じてさまざまな手法が可能です。例えば伊藤伸一構成員(日本医療法人協会会長代行)は、「地域で不足している在宅医療をどのように充実していくか、という点から検討してもよい」とコメントしています。

 

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