超高額薬剤オプジーボの「緊急的な薬価引き下げ」を厚労省が提案、ただし慎重意見も―中医協・薬価専門部会



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 オプジーボに代表される超高額薬剤の薬価について、厚生労働省は、24日に開催した中央社会保険医療協議会・薬価専門部会に、「2015年10-16年3月に効能追加などが行われた既収載医薬品で、2016年度の市場規模が当初予測の10倍を超え、かつ1000億円を超えるものについて、既存の再算定ルールを基本に緊急的に見直す(引き下げる)こととしてはどうか」という提案を行いました。

 ただし期中の薬価改定に否定的な見解もあり、今後、製薬メーカーなどの意見も聴取し、さらにこのテーマについて議論が重ねられます(関連記事はこちらこちら)。

8月24日に開催された、「第117回 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」
8月24日に開催された、「第117回 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」

超高額薬剤の薬価、抜本的な見直し論議と合わせて、オプジーボの緊急引き下げを検討

 画期的な抗がん剤であるオプジーボなど超高額な医薬品の薬価収載(保険収載)が相次いでおり、これが医療費を押し上げています(関連記事はこちら)。

 また、オプジーボについては、当初、希少がんである「根治切除不能な悪性黒色腫」(推定対象患者は470人)の治療薬として超高額な薬価(100mgで72万9849円)が設定されましたが、その後、「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」(推定対象患者は5万人)へ適応が拡大されたものの薬価は据え置かれました。

 こうした状況を勘案し、中医協では「超高額医薬品の薬価のあり方」に関する議論が行われています。7月27日に開かれた中医協総会では、▽薬価制度全般について抜本的な見直しを検討する(2018年度改定以降)▽当面、「オプジーボに対する特例的な対応」と「最適使用推進ガイドラインの医療保険制度上の取り扱い」の2点を検討する―方針が固められました。

 これを受け、今般の薬価専門部会に厚労省は次のような提案を行いました。

(1)効能追加などで大幅に市場が拡大する薬剤について、緊急的に対応することが必要であり、「2015年10月-16年3月に効能追加などがなされた薬剤(それ以前の効能追加であれば、2016年度の薬価改定で再算定、つまり薬価の引き下げが行われており、これに間に合わなかったもの)で、2016年度の市場規模が当初予測の10倍を超え、1000億円を超えるもの(突出して市場規模が拡大しているもの)」について、既存の再算定ルールを基本として対応する

(2)最適使用推進ガイドラインを踏まえた内容を、留意事項通知に記載する

ルールにない緊急薬価引き下げ、「看過できない特別な状況」があるオプジーボが対象

 (1)の緊急的な対応は、「現在ルール化されていない薬価の引き下げを行う(しかも薬価調査(市場調査)を行わない)」ものです。このため対象品目は限定する必要があり、厚労省は「看過できない特別な状況があるかないか」という視点に立って、上記(1)の限定案を提示しています。この限定案に沿うと、事実上、「オプジーボ」1製品のみが対象となる見込みです(関連記事はこちら)。

 この点、支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)や幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、オプジーボ以外にも「2015年10月-16年3月に効能追加などがなされた薬剤はあり、それらの市場規模を確認してから、『10倍超』『1000億円超』という基準を議論すべき」との考えも示しています。

2015年10月-2016年3月に効能追加などがあった医薬品については、2016年度の薬価改定における再算定(薬価引き下げ)の対象となっておらず、従前の高い薬価が維持されている(通常ルールでは2018年度の薬価改定で再算定が行われる)
2015年10月-2016年3月に効能追加などがあった医薬品については、2016年度の薬価改定における再算定(薬価引き下げ)の対象となっておらず、従前の高い薬価が維持されている(通常ルールでは2018年度の薬価改定で再算定が行われる)

 一方、診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は、「期中改定ありきで議論を進めるべきではない」とし、緊急的な薬価引き下げには否定的な考えを改めて示しています。

 また、仮に薬価引き下げを行うとして、既存のルールとして▽市場拡大再算定(予測をはるかに超えた売上がある場合の引き下げ)▽巨額再算定(特例の市場拡大再算定、年間売上1000億円超など極めて市場規模が大きい場合の引き下げ)▽用法用量変化再算定(主たる効能・効果における用法などが変化した場合の薬価見直し)▽効能変化再算定(効能が追加された場合、類似薬の薬価に合わせた薬価を引き下げ)―などがあります。ただし、オプジーボでは主たる効能・効果(非小細胞肺がん)における用法・用量の変更はなく、また類似薬もないため、市場拡大再算定などをベースとした薬価引き下げ手法を検討していくことになりそうです。

市場拡大再算定(向かって左)と市場拡大再算定の特例(巨額再算定、向かって右)の制度概要、いずれも当初予測を大きく上回って販売され、売上が一定額以上となった場合に薬価を一定程度引き下げる仕組みである
市場拡大再算定(向かって左)と市場拡大再算定の特例(巨額再算定、向かって右)の制度概要、いずれも当初予測を大きく上回って販売され、売上が一定額以上となった場合に薬価を一定程度引き下げる仕組みである

 厚労省は9月にも製薬メーカー側の意見を聴取する考えで、ここで出された意見なども踏まえて、緊急的な薬価引き下げを行うべきか議論を詰め、10月に「緊急的な対応案」(行うべきか否かも含めて)を提示する考えです。ただし実際に薬価が見直されるのは、医療現場の混乱なども避けるために、早くても2016年4月以降となる見込みです。

オプジーボなどの最適使用GL、医療保険上の「留意事項通知」に記載

 (2)の最適使用ガイドラインは、新規の作用機序を持つ医薬品(類薬を含む)を対象に▽その医薬品の使用が最適と考えられる患者の選択基準▽その医薬品を適切に使用できる医師・医療機関などの要件―を規定するもので、厚労省は、2016年度は「オプジーボ」と「レパーサ」(高脂血症用薬)とその類薬を対象とする考えを示しています(関連記事はこちら)。

 24日の薬価専門部会では、このガイドラインを医療保険制度の中で、「留意事項通知に記載する」という形で運用する考えを示しています。例えば、留意事項通知(ガイドライン)から外れた使用をした場合、当該レセプトについて査定(減額)を行うことなどが考えられます。

 この点について診療側の松原謙二委員(日本医師会副会長)は、「『ルールがすべて』という運用は困る。患者の状態は千差万別であり、医師の判断で適切に使用できる運用が必要」と指摘。また支払側の幸野委員は「ガイドラインが明らかになった後、どこまで留意事項通知に記載し、どこまで医師の裁量を認めるか、という議論をすべき」と要望しています。

超高額薬剤の薬価、次期改定に向けて「経済性の観点」も加味して検討

 また(1)(2)の当面の対応とは別に、中医協では「超高額薬剤の薬価のあり方」について、次期改定に向け、総合的な議論を行う方針も固めています。この点、厚労省は超高額薬剤を保険収載するに当たって、(a)薬事承認(有効性や安全性の審査)(b)最適使用推進ガイドライン(c)経済性の観点―の3つを考慮していく考えも示しています。

 とくに(c)の「経済性の観点」は新たに示されたもので、「対象薬剤の範囲や適用要件」「検討手順」などを今後、薬価専門部会で議論していくことになります。

今後(2018年度改定以降)、超高額医薬品を保険収載するに当たって、▽薬事承認▽最適使用推進ガイドライン▽経済性の観点―を総合的に考えていくこととしてはどうかと厚労省が提案
今後(2018年度改定以降)、超高額医薬品を保険収載するに当たって、▽薬事承認▽最適使用推進ガイドライン▽経済性の観点―を総合的に考えていくこととしてはどうかと厚労省が提案

メーカーサイドは「画期的な医薬品が悪者扱いされるのは残念」とコメント

 ところで、こうした議論について製薬メーカーサイドには少なからず不満もあるようです。

 加茂谷佳明専門委員(塩野義製薬株式会社常務執行役員)は、「超高額な薬価が設定されるのは、まさに『画期的』な薬剤であり、患者が望んでいるものである。特にオプジーボは日本の研究者・メーカーが20年をかけて研究し、世界に先駆けて開発した画期的な医薬品である。イノベーションや効能追加などがあたかも悪者のように扱われているのは残念である」とコメント。

 ただし、支払側の幸野委員は、「オプジーボは超希少疾患に対する医薬品として承認され、高額な薬価が設定された。その後、効能追加で対象患者が拡大し、研究開発費などの回収スピードは相当高まっているはずであり、その点に着目した見直しを検討している。決して、イノベーションなどを悪者として扱っているわけではない」と述べ、理解を求めています。

2018年度改定に向け、「原価計算方式」のあり方を抜本的に見直すべきとの見解も

 なお、こうした「超高額薬剤の薬価のあり方」の議論が進んでいますが、当然、2016年度の次期改定に向けて、薬価制度全般についての見直しの議論も行われます。厚労省保険局医療化の迫井正深課長も、「超高額薬剤への対応の議論が先行しているが、その他にも薬価制度をめぐってさまざまな課題が浮上しており、今後、議論してもらう」ことを確認しています。

 この点について中川委員は、例えば原価計算方式(類似薬のない新薬の薬価について、製造コストなどの原価を積み上げて薬価を定める方式)について「基本的に1982年の『新医薬品の薬価算定に関する懇談会報告書』で示されたままだが、報告書では暫定的なものとされていた。不透明な部分も多く、抜本的な見直し論議を行うべき」旨を強く訴えています。

 

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