我が国の保健医療支出は米国、スイスに次ぐ第3位、「日本は低医療費」に疑問符―医療経済研究機構



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 各国の保健医療支出を比較するに当たり、OECD(経済協力開発機構)は訪問介護や特別養護老人ホームなどの費用を含めるとする「新基準」(SHA2011:A System of Health Accounts)を定めました。

 これに基づくと、2014年度における日本の保健医療支出は55兆3511億円で、対GDP比は11.4%。これは、米国、スイスに次ぐ第3位となることが、医療経済研究機構の調べで明らかになりました。

 これまで我が国は「低費用で高い質の保健医療サービスを受けている」とされてきましたが、この認識を改める必要もありそうです(関連記事はこちら)。

OECDの保健医療支出の新基準では、多くの「介護費用」も含めることに

 OECDは、これまで各国の保健医療支出をSHA1.0という基準(旧基準)で比較してきました。この基準には、我が国の介護サービスのうち訪問看護や介護療養型医療施設などの費用は含まれていましたが、訪問介護や特養ホーム、多くの地域密着型サービスの費用などは除外されていました。

 この点、新基準であるSHA2011では、これまで除外されていた介護サービス費も保健医療支出に含むことになりました。医療経済研究機構は、新基準では長期医療(保健)サービスに「医療の有資格者が提供するサービス」(これまで含まれていた訪問看護や介護療養病床など)に加えて、「ADLに関するサービス」が含まれることになった、と説明しています。

OECDの保健医療支出比較の新基準(SHA2011)では、多くの公的介護保険サービスの費用(ブルーの部分)が含まれることになった
OECDの保健医療支出比較の新基準(SHA2011)では、多くの公的介護保険サービスの費用(ブルーの部分)が含まれることになった

 旧基準によると、2014年度の保健医療支出は49兆2059億円と推計され、対GDP比で10.1%となっています。OECD加盟35か国中10位(米国、オランダ、スイス、スウェーデン、ドイツ、フランス、デンマーク、ベルギー、カナダに次ぐ)となります(諸外国は2012または13年度)。

OECDの旧基準によると、日本の保健医療支出は35か国中10位(2014年度)で、先進諸国と比べて低い水準と言える
OECDの旧基準によると、日本の保健医療支出は35か国中10位(2014年度)で、先進諸国と比べて低い水準と言える

 また1人当たり保健医療支出は、同じく旧基準によると38万6542円で、35か国中14位(米国、スイス、ノルウェー、オランダ、ドイツ、スウェーデン、アイルランド、オーストリア、デンマーク、ベルギー、カナダ、ルクセンブルグ、フラス、オーストラリアに次ぐ)となっています。

旧基準で1人当たりの保健医療支出を見ると、日本は35か国中14位で、やはり先進諸国と比べて低い水準と言える
旧基準で1人当たりの保健医療支出を見ると、日本は35か国中14位で、やはり先進諸国と比べて低い水準と言える

 これらは先進諸国に比べて低い水準となっており、「我が国は低い費用で、質の高い保健医療サービス提供を実現している」とされてきました。

 

 しかし、公的介護保険給付の多くを加えた新基準によると、2014年度の保健医療支出は55兆3511億円と推計され、対GDP比で11.4%となります。これは、米国、スイスに次ぐ第3位の数字なのです。(ただし1人当たりで見ると43万4816億円で、35か国中15位)

介護費用を含めた新基準で保健医療支出を見ると、我が国は米国、スイスに次ぐ第3位、多くの先進諸国よりも保健医療サービスに高い費用がかかっているといえる
介護費用を含めた新基準で保健医療支出を見ると、我が国は米国、スイスに次ぐ第3位、多くの先進諸国よりも保健医療サービスに高い費用がかかっているといえる

1人当たりの保健医療支出については、新基準でみても35か国中第15位となっている
1人当たりの保健医療支出については、新基準でみても35か国中第15位となっている

 このため、我が国の「低費用で高品質の保健医療サービス提供を実現する」という認識を改めなければならない可能性もあります(関連記事はこちらこちら)。もっとも医療経済研究機構では、「SHA2011の新基準に対し、諸外国がどのような対応をとったのかは明確になっていない」と慎重な姿勢をとっています。諸外国でも介護サービス費用の計上がなされていない可能性もあり、今後のOECDデータに注目する必要があります。

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